第5話 はじめてのインストール

「・・・ここは?」

ふと気がつくと、俺は見たこともない場所で寝転んでいた。

見渡す限り緑の、平原。建物も、人もいない。頭もぼーっとする。

いつまでもこうして寝転んでいられそうだが、そういうわけにもいかない。

「なんで俺はこんなところに・・・ってなんだこれ!?」

俺は自分の服装を見て驚いた。上半身に鎧、何より腰に刺さった大きな刀。

これじゃまるで侍だ。

「どうなってるんだ・・・」俺はこれまでのことを思い出す。

スマホを落とし、妙な女性に出会って―

「ああああっ!あの女のせいか!?」

俺は思い出した。スマホそっくりの端末を手渡され、言われるがままに

操作して、そして・・・今に至る。

「そういえばあの女、これのことを『デバイス』って言ってたな」

手渡されたデバイスを改めて見て、俺は今の状況に納得した。

そのデバイスの裏側には、『VISPhone』と書かれていた―


俺があの時発した『インストール』という言葉にこのデバイスが反応したこと。

このデバイスの名前が『VISPhone』ということ。

つまりここは・・・。

「VISワールドってことか・・・。」

今いる場所が何なのかは分かったが、まだまだわからないことの方が多い。

何故あの女はこんなことをしたのか。

ここはVISワールドの何処なのか。

何より・・・どうやったら帰れるのか。

「まあ考え込んでいても仕方がないか」

俺はとりあえず歩き出した。アテがないので進む先は勘で決めた。

「いろんなゲームをクリアしてきた俺だ。腰には強そうな刀もある。

なんとかなるだろ!」


しばらく歩くと、向こうから人影が走ってきた。

「お、誰か来るな。あのーすみませーん!」

これで帰る方法がわかる・・・と思ったら。

向こうから走ってきた人物は泣きながらこっちに向かって走ってきた。

「た、助けてーー!」

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