第2話 『VIS』

「・・・なんだよそれ。日曜大工でもするのか?」

「ええええっ!?本当に知らないの?」ととても驚いた様子の若葉わかば

「つい最近解禁された、新技術の・・・えっと・・・

なんか難しい名前のやつ。」

どうやらその先は若葉わかばも詳しく覚えていないらしい。

しかしここ最近面白いことはないかと探していた俺は、

若葉わかばの話で思い出した。

「あー、あれだろ。『VISビスワールド』ってゲームのことだろ?」

「そう!それそれ!バーチャルなんちゃらってやつ!」と若葉わかば

「『バーチャルインストールシステム』な。

で、それがどうしたんだ?」

「そのゲームがすごく面白そうなんだよ!でも遊ぶのには

専用のデバイスが必要で、それがすごく品薄で・・・」

「お前さ、さっきからなんちゃらーとかすごくーとかばっかで

なんかバカっぽいぞ?」

まるで小さな子どものように興奮して語る若葉わかばを見て、

俺は話題に茶々を入れる。

「もー!ちゃんと最後まで聞いてよ!」と頬を膨らまして怒る若葉わかば

「あー悪い悪い。」

「でね、今朝そのデバイスが届いたの!今日帰ったら早速やってみるんだー。」

「・・・何かと思って最後まで聞いてれば結局自慢話かよ。」

「えへへ・・・真久まーくんもデバイス買って、一緒にやろうよ!」

「へいへい。善処しますよー。」と俺が適当に答えると、

「その言い方だとまたすぐ忘れちゃうね・・・」と落ち込む若葉わかば

まったく、喜んだり落ち込んだり忙しいやつだ。

普段はもっとおとなしいのだが、何かに熱中した時の若葉わかば

感情の起伏が激しくなる。このままマイナス方向に進むと、

明日の宿題の答えを見せてもらえなくなる可能性がある。それは困る。

「じゃあ今日はお前は先に帰れば?ゲームやる時間なくなるぞ。」

機嫌が最悪になる前に、慌てて俺は若葉わかばに言った。

「え、いいの?」

「もうすぐ課題も片付くから、もう大丈夫だ。ありがとな。」

トントン、と課題のプリントをまとめてみせる。

「そっか、じゃあ先に帰るね!また明日!」

そう言い終わるのと同時に、若葉わかばはダッシュで教室を出ていった。

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