第26話 油断

 午前6時。

 私の足下に、魔方陣が現れる。


 【パッシブ】・弟感知

 【肉体条項】・弟近接時、ステータス +5倍

 00:28:59


 「おっはよー!」

 「ちよねー。おはよ…。」

 ロッサちゃんのしっぽにくるまれ眠そうにしている。


 「いいなー。ロッサちゃん。私もしっぽ触っていい?」

 「はぁ?ダメに決まってんだろ!獣人にとっては大事な部分なんだよ!」

 「ひろは、触らせてるじゃない。」

 「ご主人様は、付き合いがなげぇーんだよ。千代は、数分でいなくなるじゃねぇーか。」

 うぐっ。まだ、心の距離があったのね。


 「ふぅーん。こっちには秘密兵器があるもんね~。」

 「あん?」

 「じゃーん!饅頭だー!」


 「……。や、やさしくだぞ。」

 饅頭強し。恥じらうロッサちゃん、萌々ですなぁ~。


 さわさわ


 「うわっ。思ったより、柔らかくてスベスベしてるのね。」

 こうなると、ドッタ君のも触りたいなぁ~。

 「ドッタ君。饅頭…」

 「触っていいどぉー!」

 ちょろいですなぁ~。


 さわさわ


 「ぉぉ。短くてかたいんだ。これはこれで良い。」

 ルルちゃんの葉っぱって?

 「ルルちゃん?その葉っぱ触ってもいい?」

 「いいけど。絶対に傷付けないでほしいの。」

 「うん。絶対に傷付けないよ。」


 さわさわ


 「しっかりしてて、ひんやりしてるんだぁ~。」

 「朝だから。日差し浴びたら、あたたかくなるの。」

 「なるほど。なるほど。」


 さわさわ


 「ひろも!ひろも混ざる!」

 「うん。いいよ。」


 さわさわ


 「千代の髪って、サラサラなの。」

 「うん。お気に入りのシャンプー使ってるよ。今度、持ってきてあげるね。でも、こっちってお湯で頭とか洗ったりするの?」

 「するの。旅の間は魔法だけど、お風呂入るの。」

 「そうなんだぁ~。みんなで固まってると温かくて気持ちいね。」


 さわさわ


 「うん…。気持ちいい。」

 「また眠く…なってきただぁ。」


 さわさわ


 【特殊条項】・リミット3秒時、線香花火せんこうはなび発動


 「え?え?ええ?」


 「千代?!どうしたの?何かあったの?ものすごく長かったけど。」


 「実は…。」


 ゴゴゴゴゴゴゴ…

 母がみるみる変化する。


 「何やってるの!溜まってた時間を全部、もふもふに使っちゃうなんて!これから街なのよ?!何があるかわからないのに!」


 数年ぶりに、こっぴどく母に叱られた。

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