第20話 だらけ

 午前6時。

 私の足下に、魔方陣が現れる。


 【パッシブ】・弟感知

 【肉体条項】・弟近接時、ステータス +5倍

 00:02:59


 「おは…。」

 振り向くと、マザージャイアントスパイダーがいる。

 「キャーーッ!!」


 「へへへーん。死んでるぜ。これで、まんじゅうパン屑と交換だ。」

 何考えてるの!何考えてるの!どう考えたら、そうなるのよ!


 落ち着いて。落ち着いて。すー。はー。

 「すー。はー。すー。はー。ルルちゃん、燃やして。ふー。ドッタ君、荷物から朝食だして。」


 「へへへーん。」

 ロッサちゃんのしっぽが、褒めて褒めてオーラを出している。

 あれよね。飼い猫が鼠を咥えてきたときに、叱っちゃいけないって奴よね。そうだ!魔石だ!


 「この蜘蛛の魔石って・・・あ。燃やしちゃった?」

 「あるよ。魔石はお金になるから、全部とってあるの。」

 「良かった~。持って帰れるか試したいから、色とか大きさとか、違うのいくつか頂戴。」

 「それなら!これと!これだ!」

 「うん。ありがとう!饅頭は1つづつね。それで最後の饅頭だから。」

 「おう!」

 千切れそうなくらいしっぽを振っている。

 「ロッサちゃん。食べるのは朝食の後だからね。」


 【特殊条項】・リミット3秒時、線香花火せんこうはなび発動


 あー。無駄な時間使っちゃったから…。


 「ひろ。朝食しっかり食べるのよ!」

 「うん!」


 慌ただしく動いている母。

 「千代。悪いんだけど、おとーさん。書類忘れてったの。駅まで届けてくるから、留守番お願いね。」

 「うん。とーさん、今日は早いんだね。」

 「なんでも、地方に出した支店が忙しいみたいなのよ。」


 地方人口権利法ちほうじんこうけんりほうにより、建物の不足している地方に家や店の建築が相次いでいて、父の仕事も移動が多い。

 母を玄関で見送り、居間のテーブルでダラーっとする。

 「そうそう。魔石。」

 リュックのポケットに突っ込んだ魔石を取り出し、観察する。


 「赤も、紫も、黒もオーケー。小さいのも、大きいのもオーケー。」

 デジカメで写真をとり、ノートパソコンのリストを更新する。


 カサカサ…っと、気配を感じ、流れるように新聞紙を丸めて叩き付ける。


 スパーン!


 新聞紙の下には、黒い魔石があり、霧になって消えていく。


 「あれ?ま、いいや。」

 黒はなんだか気持ち悪いから、次からは持ってこないようにしよう。


 「あ、朝刊!…昨日の新聞でよかった~。」

 新聞紙をゴミ箱に捨て、ダラーっとする。

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