第14話 写真

 「…写真。ひろちゃんに写真を持って行ってあげて!どうして、気づかなかったのかしら!」

 「そ、そうよ!」

 「写真?お。カメラがあるぞ!」

 「とーさん。電池はダメだって。」

 「いやいや。千代。俺が若い頃に使っていた電池いらずのカメラだ。」

 「カメラって、電池なくて動くの?」

 「ははは。当たり前だろ。Nyakon FMX どこにしまったかな?かーさん、わかるか?」

 「ええ。多分、二階の押入れにしまってあるわ。」

 「出しておいてくれ。俺は、近所の写真屋にフイルムがないか見てくる。」

 「今から?閉まっているわよ。先方に悪いわ。」

 「確か、あそこは、千代の同級生が息子だったろ?」

 「うん。りく君のうち。」

 「顔見知りなんだ、玄関の方から頼んでみるよ。」


 母はカメラを探しに、父はフイルムを買いに、私は居間に置いてあるアルバムから弟に渡す家族写真を選ぶ。


 1時間後。

 「ひろ。呼んでくれないね。寝ちゃったかな?」

 「あら。一晩おかれると食器の汚れが落ちにくいのよねー。」


 「ただいま。買ってきたぞ。」

 「おとーさん。あった?」

 「ああ。熱海行ったお土産もらったんで、10本ほど買ってきた。」

 「そんなにいっぱい?」

 「ひろとの連絡手段だ。いっぱいあって困らんよ。」

 「使えるかも分らないのに…。」

 「で、かーさん。カメラはあったか?」

 「はいはい。コレ。」

 「そうそう。いやー懐かしいなぁ~。千代。フイルムの入れ方から、一通り説明するから、見ておくんだぞ。」

 「うん。」


 中学のころ、博物館で見たブリキのおもちゃみたいだなぁ~と見ていると。

 「これで、オッケー。他のつまみは、わからないうちは気にしないでいいからな。」

 「それで、どのくらい撮れるの?」

 「フイルムのパッケージに書いてあったろ、24枚とれるぞ。ほら、1枚とるから二人ならんで。」

 「いや。私が撮るから、とーさんがポーズしてよ。」

 「しょうがないな、落とさないように首にストラップをかけなさい。」


 昭和の俳優のようなポーズをとる父。うん。寒い。


 カシャッ


 「?しょぼい音したんだけど、大丈夫?」

 「しょぼいって、なんだ!いい音だろ!」


 父がカメラの良さを解説し始める。こんな趣味が父にあったなんて以外、だけど早く話終わらないかなぁ~。

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