第8話 母と私

 母が洗濯を終わらせて、話しかけてくる。

 「どうしたの?ぬいぐるみ抱きしめて。」

 「ひろが寂しくないように、あげようと思って。」

 「ぬいぐるみの中に入ったら、おかーさんも異世界にいけないかしら。」

 「ダメだと思う。持ってて行けるなら、手をついてるテーブルとかも一緒に持っていってるはずだから。」

 「ダメかどうか、手を繋いでおきましょ。はーい。千代。」


 母の手をとる。


 「ママと手をつないだのって、何年ぶりかな?」

 「あら。覚えてないの?小学校の卒業式で手を握ったら、引っ込めたじゃない。」

 「あ、あれは、みんなのいるところで、恥かしかったから。」

 「それ以来、手をつないでないよの。」

 「そうだったんだ、ごめんね、、、」

 「いいのよ。もう、大きくなったんだな~って思えたし。そういえば、ひろちゃんはトイレどうしてるのかしら?」

 「どうしてるんだろ?体をふいてあげた時には気づかなかったよ。トイレットペーパーも持っていかないと。」

 「緊張してトイレが出てないのかもしれないわね。水分を多めに取らせて上げた方がいいわ。」

 「うん。向こう行ったら、聞いてみる。」


 私の椅子の下に、魔方陣が現れる。


 【パッシブ】・弟感知

 【肉体条項】・弟近接時、ステータス +5倍


 「ちよねー。」

 「ん?どうしたの?えむぴー4だけど…」

 「向こうでねー。お馬さんの鳴き声が聞こえたのー。」

 「馬ってことは人!!おんぶするから、背中に乗って。」


 【肉体条項】・弟接触時、ステータス +10倍、姉弟回復


 全速力で弟の指示する方に走る。

 (はぁはぁ。)


 「向こうー。」

 (道。こんな近くに道があったのね。)


 「見えた!今から、人に預かってもらうから、いい子にしてるのよ。」

 (はぁはぁ。)

 「えー。」

 「さっきのところで、一人がいーい?」

 「・・・わかった。」

 「落ち着いたら呼んでね。ねーね。ちゃんとお礼言うから。あ、ぬいぐるみ。これ、あげるね。」


 こちらに向かってくる、ホロの馬車と護衛が3人。

 馬車を操っているかっぷくの良い女があるじだと思う。

 私は、馬車のそばまで行くと、護衛が武器を向けてくる。


 ≪ステータスオープン≫

 00:00:14

 (じ、時間がない!このまま、消えたら怪しまれちゃう!)


 「こ、この子をお願いします!これ、少ないですが、また、持ってきますので。」

 武器を構える人にはさすがに近づけなく、弟に金の指輪を持たせ、私は道から外れ、森のなかを駆け出す。

 女主人が何かを叫ぶ。

 「つか■■■!■■■■■!」


 【特殊条項】・リミット3秒時、線香花火せんこうはなび発動

 全速力で馬車から遠ざかる。


 【肉体条項】・弟遠隔時、ステータス -10倍


 母と目が合う。

 「はぁ。やっぱり、一緒にいけなかったわね。」

 「それより、ママ聞いて!人がいたの!預けたから、ひろは大丈夫よ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る