第6話 いちにち

 「千代が無事でよかった。」

 「ママ。でも、ジャイアントゴブリンが生きてたら・・・」

 「大丈夫。大丈夫。」

 母は震えながらも、私を抱きしめなぐさめてくれる。


 1時間たっても、弟は私を呼び出しては来なかった。

 「どうしよう・・・」

 「大丈夫だ。かーさん。ネットで調べたキャンプ用品店まで送るから一緒に出よう。」

 「ええ。ひろちゃんから呼ばれたら電話頂戴ね。」

 「あ。携帯。」


 大きめのリュックに突っ込んでおいた携帯を取り出したが、携帯は膨張し、たわんでいて、電源の入る状態ではなかった。

 他の物を確認すると懐中電灯の電池も膨張して使える状態ではなかった。

 「電池類はダメそうだな。何かあったら、家の電話から連絡してくれ。」

 「う、うん。」


 1時間おきに母から電話があり、ひろに呼ばれていないことを伝える。

 12時に母が帰ってきて、荷物を用意する。


 ・キャンプリュック

  *テント

  *寝袋

  *キャンプマット

  *キャンプバーナーと燃料

  *毛布

  *ランタン

  *高カロリー食品

  *キャンプ斧

 ・お弁当と水筒

 ・槍(物干し+出刃包丁)


 13時。私の足元に、魔方陣が現れる。


 【パッシブ】・弟感知

 【肉体条項】・弟近接時、ステータス +5倍

 【精神条項】・弟悲哀時、ステータス +5倍


 森の中にある崖下のくぼみから、ひろが飛びつく、私もひろに飛びつく。


 【肉体条項】・弟接触時、ステータス +10倍、姉弟回復


 「ひろ~!」

 「ちよねー!ごめんね!ごめんね!」

 「え?どうして、ひろが謝るの?」

 「・・・。」

 「ん?」


 「ちよねーをおいて、逃げた・・・」

 「それで、ねーね呼ばなかったの?」

 「うん・・・」

 「逃げてよかったのよ。ひろは、まだ4歳なんだから。」

 「・・・。」

 「はい。ママからのお弁当。ママも心配してるから、一回、戻してもらっていいかな?」

 「一緒にいて!」

 「う~ん。恐かったもんね。じゃ、一緒にそこのくぼみでお弁当にしよっか?」

 「うん!」


 ≪ステータスオープン≫

---------------

 00:05:18

 名前:花渕 千代(ちよ)

 種族:人♀

 歳:16

 LV:6

 HP:44/44

 MP:35/35


 魔法:-

 スキル:

  【ユニーク】

   弟愛ていあい

---------------


 すべてのMPを使い切るまで一緒にいて、心配顔の母の前に戻った。

 「随分、長かったわね!無事?ひろは無事だったの?」

 「無事だったけど、ジャイアントゴブリンでまいっちゃったみたい。すごく、元気がなかった。でも、いいこともあったよ。MPが増えてるから、呼び出し時間増えてるかも。」


 その日は、1時間ごとに呼ばれて、夜はキャンプマットをいて寝袋で寝かしつける。

 家族会議で、ひろが元気になるまでは、移動しないことになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る