第4話 家族

 母に促され、部屋で服を着る。

 居間で、もう一度、最初から話をする。


 「警察かしら?消防かしら?」

 「かーさん。人間の手にえることじゃない。」

 「じゃぁ。ひろちゃんは?どうなるの?」

 「「・・・」」


 「私は、ひろを何とか、向こうの世界の町まで連れて行きたい。」

 「そ、そうよね。今も森で、ひとり寝てるのよね。お弁当作らなきゃ。」

 「うん。ひろ寂しがってるから、持ってってあげるね。きっと、目が覚めたら呼ばれると思うわ。」

 「向こうの世界って、ゴブリンとかオークとかいるんだろ?今ごろ。」

 「とーさん!なんで、今、そんなこというのよ!」

 「いや、だって、」

 「ママ。見てないけど、可能性はあるよ。だから、包丁一本持っておくね。」

 「いや、女の子が包丁一本で、勝てるとは思えん。物干し竿に包丁をくくり付けてやりにしておこう。」

 「千代に刃物?あぶなくない?」

 「テントとか、キャンプ用品も必要だな。かーさん。明日、買いに行ってくれ。」

 「わ、わたしが?とーさんじゃダメなの?」

 「俺は明日、会社にいく。」

 「「とーさん!」」

 「聞け。もし、1年くらいこの状態が続いたとき、誰がお金の面倒をみる?俺も俺のできることで家族を守る。」

 「とーさん。」

 「かーさん。ひろの目がいつ覚めるか分からん。必要なものをリュックに詰め込んで、千代に持たせておこう。」


 ・弁当と水筒

 ・ひろの着替え

 ・ひろのリュック(タオル・お菓子・色ペン・お絵かき用紙)

 ・大きめのリュック(毛布・懐中電灯)

 ・やり(物干し+出刃包丁)


 (必要なものが、きっと、いろいろあるはずなのに、思いつかない・・・)

 「千代。少し寝ておきなさい。」

 「でも。」

 「3時間したら起こすから、寝ておきなさい。」

 「う、うん。」

 私は居間に布団を持ち込み目をつぶるとすぐぐに寝ていたらしい。

 起こされてから、もう一度、するべきことの確認をする。

 「千代。この指輪しておきなさい。金でできてるから、少しは価値があるわ。」

 「ありがとう。ママ。」


 午前6時。私の足元に、魔方陣が現れる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る