第3話 弟愛

 元の森。いえ。元の場所。振り向くと声を殺して縮こまって泣いている弟。

 召喚だもんね。前に呼び出すよね、とどうでもいいこ事を考えながら、弟を抱きしめる。


 【肉体条項】発動。


 ビクッ

 「大丈夫。大丈夫。」


 自分にも言い聞かせるようにつぶやき、背中をなでてやる。弟は安心したのだろう。そのまま、寝息をたて始めてしまった。

 弟をおぶり移動する。


 ≪ステータスオープン≫

 00:00:43


 (多分、1時間で1MP回復よね。)

 遠くから、獣の遠吠え。


 「あと、40秒!な、何とかしないと。」

 (食べ物持ってくるんだった。毛布持ってくるんだった。今、今出来ることを考える!)


 「あの木のうろ。」

 (うん。中もそんなに汚くない。)

 弟をそっと置き、パジャマを脱いで弟に被せてあげる。


 (少しでも、情報を持ち帰らないと。)

 落ちている石をつかむ、木の枝を一本折りとる。


 ≪ステータスオープン≫

 私のスキル弟愛ていあいって何よ!


---------------

 【パッシブ】

 ・弟感知

 【肉体条項】

 ・弟近接時、ステータス  5倍

 ・弟接触時、ステータス 10倍、姉弟回復

 ・-

 【精神条項】

 ・-

 ・-

 ・-

 【技術条項】

 ・-

 ・-

 ・-

 【感知条項】

 ・-

 ・-

 ・-

 【特殊条項】

 ・-

 ・リミット3秒時、≪線香花火せんこうはなび≫発動、ステータス10倍、20倍、30倍

 ・-

---------------


 (姉弟回復?)

 そっと、弟のかたわらに座り、なでてみる。


 【肉体条項】発動。


 少しだけ、暖かくなるのを感じ、なでつづける。


 00:00:03


 【特殊条項】≪線香花火せんこうはなび≫発動。


 00:00:02

 00:00:01


 弟の手をしっかり握る。


 お茶を手に持ったままの姿の母、私の真横まで来て私を探していたであろう父。

 「ひろ。連れてこれなかった・・・」


 私のほほを涙がつたう。

 ひろも石も木の枝も持ってこれなかったけど、私は下着姿で戻された。

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