第2話 隠れん坊

 膝をつき項垂うなだれていると、母が声をかけてくる。


 「千代?もう、11時よ。ひろちゃんがどうしたの?」

 「ママ!ひろが、ひろが、」

 「はいはい。で、ひろちゃんは?」

 「トイレで消えちゃった・・・」

 「もう。4歳の子がトイレに流れちゃうわけないでしょ。」

 「うぅぅ・・・」


 父も起きてくる。

 「ふぁぁ~。かーさん。千代は何騒いでたんだ?」

 「うーん。ちょっと、居間に移動しましょうか?」


 居間のテーブル。父と母は私の正面の席につく。

 私がトイレで起こったことを話しても、父も母も真剣には聞いくれない。


 「うーん。千代。で、ひろちゃんはどこ?」

 「だから、異世界に行っちゃたのよ!」

 「まぁ、お前の言うことを1%でも信じるなら、森に行ったときに、足の裏に土や草のあとくらい残ってるだろ?」

 「本当なんだから!」


 「はいはい。しょうがないわねー。おとーさん。30分ほど隠れん坊に付き合ってあげましょ。」

 「隠れん坊したかったのか?よーし。おとーさん頑張っちゃうぞ!30分どころか5分で見つけてやる!」


 40分後。居間に父が戻ってくる。

 その間に、母はお茶を用意して飲んでいる。


 「はい。おとーさん。お茶。」

 「降参。降参。まーったく、どこに隠れたんだ?おとーさん。全然、分らなかったよ。」

 「だから、異世界に行っちゃたのよ!」

 お茶をすすり、一言。

 「千代。」

 静かだが、言い訳を許さない母の言葉。ふざけて40分も弟を隠していると思い、許せないのだろう。でも、隠していないの。

 「本当なの。本当なの。こうしている間にひろは一人で森の中に…」

 「千代。」

 (どうしたら?どうしたら?)


 私の椅子の下に、魔方陣が現れる。

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