第2話 海の中に沈んだ町
さて、今回は海の中に沈んでしまった町や大陸についてです。
◇アトランティス
その手の話で一番有名なのは、言うまでもなくムー大陸とアトランティスですね。
アトランティスは、古代ギリシャの哲学者プラトンが著書の中で記述した大西洋上にあったとされるおよそ1万2千年ほど前に栄えたとされる島のことです。
この島は大陸ほどの大きさがあったとされ、非常に高度な文明を持っていたそうです。
しかし強大な軍事力を背景に世界の覇権を握ろうとしたものの、ゼウスの怒りに触れて海中に沈められたとされています。
アトランティスがあったという証拠は見つかって居ませんが、は実在した国や島がモデルになったのではという意見もあります。
◇ムー大陸
ムー大陸は、ジェームズ・チャーチワードの著作に記された今から 約1万2000年前に太平洋にあったとされる失われた大陸です。
チャーチワードによると、太陽神の化身である帝王ラ・ムーを君主とした帝国が繁栄していものの、神の怒りを買い、一夜にして海底に沈没したのだとか。
イースター島やポリネシアの島々を、滅亡を逃れたムー大陸の名残であるとする説もありますが、決定的な証拠となる遺跡遺物などは見つかっておらず、伝説上の大陸であるとされています。
恐らく大半の方が気づいていたかと思うのですが、ピぺの出身地のカクヨ・ムーはムー大陸がモデルです。
太平洋上にあるという場所設定なんかは、そのまんまムー大陸ですね。
◇アレクサンドリア遺跡
アトランティスやムー大陸がオカルトの域を出ないのに対し、実際に海に沈んだ街が見つかった場所もあります。
例えばエジプトの古代都市アレクサンドリアは、紀元前331年に建設され、プトレマイオス朝エジプトの首都として繁栄しましたが、度重なる地震や地盤沈下によって8世紀頃には大部分が海底に沈みました。
その後、長いことこの都市についてはは謎のままとされてきましたが、1992年の発掘により発見されました。
海岸から数キロ離れた水深数メートルという地点から巨大なファラオ像や石碑が発見されたのです。
◇バイア海底遺跡
イタリアのバイア海底考古学公園では、古代ローマ時代の都市遺跡を見ることができます。
この都市は当時の貴族階級のリゾート地として栄えましたが、四世紀頃から地盤沈下によって海中に沈みました。
この場所では実際に観光客が海に潜って古代ローマ時代の街を見ることができるそうで、機会があったら是非行ってみたいですね。
◇日本の海底遺跡
日本では与那国島の海底遺跡が有名ですが、残念ながら専門家の間では、これは自然に波などで地層が削れてで来たものという意見が殆どで人工物では無いようです。
ですが日本には他にも「一夜にして沈んだ島」の話があります。有名なもので言えば、大分の瓜生島伝説などがそれに当たります。
この島は当時5000人ほどが暮らしており、島津勝久の居城もありましたが、伝説によると、島の住人が神社の像を赤く塗ったことから、神罰によって一夜にして島が海に沈んだというのです。
その是非については諸説ありますが、沈んだとされる年代の同時期の1596年に別府湾を震源とする地震が実際にあったことが文献や地質調査などから分かっており、瓜生島はこの地震によって液状化現象が起き沈んだのではと言われているそうです。
また、海ではありませんが、琵琶湖の湖底からは100余りもの遺跡が見つかったという事例もあります。海底遺跡ならぬ湖底遺跡ですね。
湖周辺の各地には「かつての村や集落が湖中に沈んだ」という伝承が残っており、調べたところ、実際に、縄文時代から平安時代にかけて幅広い年代の遺物が発見されました。
また2014年には19世紀初頭に建てられた鎮守社と見られる建物が見つかっています。
発見場所は、豊臣秀吉が築城した長浜城の遺跡から、沖合100メートル、水深1.8メートルの湖底で、1819年の文政近江地震が原因で、湖底に沈んだ可能性があるとのことです。当時、滋賀を震度6弱とかなり大きな地震が襲ったようです。
元々琵琶湖は400年前に誕生してから移動、消滅、誕生を繰り返し、地震等の地質変動で成長しつつ北上して現在の姿になったそうなです。その間にも水位が上昇したり後退したり、また陥没したり津波さえあったようです。面白いですね。
その他にも地震や地盤沈下などで町が海に沈む例はいくつかあるようです。興味がある方は是非調べてみてください。
失われた土地というのは、ロマンがありますね。
■参考
佐野貴司(2017)『海に沈んだ大陸の謎 最新科学が解き明かす激動の地球史 』講談社.
井上たかひこ(2015)『水中考古学 クレオパトラ宮殿から元寇船、タイタニックまで』 中公新書.
片桐千亜紀 (2014)『沖縄の水中文化遺産―青い海に沈んだ歴史のカケラ』ボーダーインク.
辻原 康夫(2011)『世界の古地図に描かれた「幻の国」を追う 語り継がれてきた“伝説の地”の真相に迫るイラスト図解版』河出書房新社.
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