おまけ:オカルト少女、よもやま話
第1話 東京湾の今・昔
みなさんこんにちは。
ここから先は『オカルト少女と宇宙人に攫われた少年』本編のおまけ的なエッセイです。
『オカルト少女~』は「海の底に東京が沈んでしまった設定で書きたい」という思いつきから始まった小説です。
でも、私の中にはその設定を思いついた後すぐに疑問が浮かびました。
東京が沈むなんてこと、本当にありえるのだろうかと。
『オカルト少女』を読んだ方の中にも「東京が海に沈んむなんて荒唐無稽だ」と思われる方もいるでしょう。
ところが調べてみたところ、東京湾や関東平野は、最初から今の姿だった訳では無かったことが分かりました。
ここでは東京湾の歴史を少し解説していきたいとおもいます。
◇下末吉海進
例えば今から約12万年ほど前は、ちょうど氷河期と氷河期の間にあたる温暖な時代でした。この時期を下末吉海進と呼びます。
海面は今よりも高く、千葉県では房総半島が島となり、神奈川県も東京湾と相模湾から海水が入り込み、綾瀬市や海老名市、厚木市は海に沈んでいたことが分かっています。
(『オカルト少女~』ではこの時に近い状況になっている、という設定です)
渋谷の地下には12万年~10万年前の粘土層があるのですが、これは当時の海の堆積物だと考えられているのだそうです。
◇氷河期(最終氷期)
逆に2万年前ころには、氷河期の影響で東京は現在の札幌と同じような気候になりました。
海面は今より120m下がり、東京湾の浦賀水道(房総半島と三浦半島の間の海域)以北が全て陸地となったことが分かっています。
ちょうどこの頃、東京湾には古東京川という川が流れていました。
そしてその跡は今も残っており、古東京川のあった場所は他の場所よりも水深が深くなっているため大型船の航路になっているそうです。
◇縄文海進
それから氷河期が終わり、7000年前、ちょうど縄文時代ころには地球は再び温暖な時代を迎えます。
東京の平均気温は1~2度上昇し、これに伴い再び海水が増え、海は埼玉北部まで広がったことが貝塚の調査などから分かっています。
千葉県館山市では沼サンゴ層と呼ばれるこの頃の珊瑚礁の化石が発見されています。
◇地球温暖化と近年の気温上昇
このように、東京湾は気候変動とともに、時代によってその姿を変えてきた訳なのですが、この先はどうなるのでしょう。
ここで最近の気候変動に目を移してみます。
するとここ一世紀のあいだに北半球の年間平均気温は1度上昇していることが分かります。
たかが1度、と侮ってはなりません。
年間平均気温ということは、元旦から大晦日まで例外なく1度高くなっているということです。
でも実際には例年と同じ気温や寒い気温の日もあるでしょうから、その分、他の日はより気温が高くならなければ平均で1度とはなりません。
具体的な例で見てみると、東京と宮崎の平均気温の差がだいたい0.8度くらいです。
宮崎といえばマンゴーで有名です。つまり、1度上がれば東京でもマンゴーが生育できる環境になります。
最近では地球温暖化が叫ばれています。
多くの研究機関ではこのまま温暖化が進めば今後100年で平均気温が5度程度上がるだろうと予測しています。
5度といえば、宮崎どころか東京と奄美大島の気温差に匹敵します。
つまり、100年後には東京は奄美大島になってもおかしくないのです。
◇東京湾と地球の今後
さて、ここまで日本が温暖化する未来について語ってきましたが、実は地球温暖化が叫ばれる一方で、地球全体の歴史から見ると今は寒冷な時代であるとの意見もあります。
地球ではこれまで10万年おきに氷河期を繰り返してきたことや1940年代から30年に渡り気温が下がり続けていることから、地球温暖化が叫ばれる前、1970年代あたりまでは、むしろ寒冷化が叫ばれていました。
この影響を受けこの時代のSFでも寒冷化や氷河期を扱ったものが多くありました。
なので、温暖化せず、寒冷化する未来もあると思いますし、氷河期の後に氷河が溶け陸地が沈むというのもあり得ると思います。
重要なのは、この先、どんな気候変動があってもおかしくないということです。
私たちは、自分が子供の頃から知っている地形や気候を当たり前のものと思いがちです。ですが、気候も地形も決して一定ではありません。
私たちの生きている時代は長い地球の歴史からするとほんの僅かな期間でしかなく、どんな地形も気候も文明も永遠に続くというのは無いのです。
そういう思いを『オカルト少女~』から感じとって頂ければと思います。
●参考
中川毅(2017)『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか 』講談社.
山崎晴雄・久保純子(2017)『日本列島100万年史 大地に刻まれた壮大な物語 』講談社.
貝塚爽平(2011)『東京の自然史』 講談社.
縄文時代の化石サンゴ礁 - 神奈川県立生命の星・地球博物館
http://nh.kanagawa-museum.jp/kikaku/ondanka/pdffile/wt_16v101.pdf
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