有機物と無機物

 『プラスチックの無機物の冷たさが』という一説に眉をひそめる。

 それは、友人から読んでみてと勧められたネット小説の一節だった。

 何を考えて、これを勧めたのか。

 私が好きそうだと思って、勧めてきたのか。私なら引っかかるだろうと思って、読ませてみたのか。

 前者なら、申し訳ないがこういう所で私は一気に冷めてしまう。後者なら、きちんと気付いたことを知らせねばならない。

 さて、どちらだ?

 ここはひとまず、どちらに転んでもよいように。


 翌日、友人に会ったので、読んだことを伝えた。

「で、どうだった?」

 そうくるよね。

「いや、ちょっとしたところで、こりゃ無いわって、思っちゃって」

「えっ? どこ?」

 気にしていなかったのか。

 例の場所を探して、見せる。

「ん? 何か変?」

「プラスチックって、有機物だから」

「生き物じゃないし、温かくもないのに?」

 そうか、判断基準はそこなわけか。

「基本的には、燃やした時に水と二酸化炭素になるのが有機物」

「プラスチックが有機物なら、無機物はなんなのさ」

「身近なところだと、金属とかしお

「砂糖は?」

「砂糖は有機物。って、サトウキビとか植物から作ってるんだから、有機物でしょ」


 その後もいくつか、これはどうなんだという問答をした。

 基本の基本は、中学の時に習っているはずなのだけど。あれ、高校か?

 いやいや、スチールウールを燃やしても水も二酸化炭素も出ませんというのをやったのは、中学のはずだ。

 ひとまず、無生物と無機物は同一ではないことは訴えておきたい。

 そして、色々とやりとりをやった後に、「これだから理系は」というセリフで締めくくられた。

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