間違い? 勘違い?

陽月

青色透明

「すみません、ここの色指定なんですけど」

 差し出された紙を見てみれば、『青色透明』という指示がある。

「『青色透明』がどうかした?」

 別に困るような指示じゃないよねと、答える私に、質問者はキョトンとする。

 こことされた場所はそれだと思ったのだけれど、素材感や周りとの色のバランスだろうか。ざっと見る限り、調和等は問題なさそうなのだけれど。


「えっと、『青色透明』ってどんな色かな、と」

「ん? 硫酸銅水溶液とか、液体酸素とか」

 パッと思いつくものをあげてみるが、どうにも通じなかったようだ。

「すみません。文系に分かる例えでお願いします」

 青色で透明なものはと、少し考える。そうだ、あれだ。

「ブルーハワイのシロップとか」

「ブルーハワイって、青色ですよね?」

「そうだよ、青色だよ」

 だから例に挙げたのだけど、何かおかしかったっけ? どうにも会話がおかしい。

 相手も相手で、考えているようだ。


「ブルーハワイって、がっつり青色で透明じゃないですよね?」

 ああ、なるほど。

「ブルーハワイは『無色透明』じゃないけど、向こう側が透けて見えるから透明だよ。色がついているかと、向こう側が透けて見えるかは別だから」

『無色透明』と言ったことで、ようやく相手も飲み込んだようだ。

「つまり、ここは青色のガラスのようなイメージということで」

「そうそう。透けていますって感じで」


「青色と透明って両立するんですね」

 なんだか、感心しているようだ。

「中学の時に理科で習わなかった?」

「覚えていません」

 そうか。そうだよな。テストさえ終わってしまえば、もう必要ないよな。

 私も、習ったことを全部覚えているわけではないもんな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る