70

リヌクは息苦しそうに口を開き、額からは大量の汗が流れていた。



「どうしたんだよ」パドスは、その異変にすぐに気づいた。



「パドス、俺はもうだめだ」リヌクは、自分の腰の部分に手を回した後、何かを地面に投げ出した。



それは、死の風から身を守ってくれる魔よけの砂が入った袋だった。



パドスも同じ袋をリヌクからもらっていた。



しかし、そのリヌクの砂袋は破けていて、なかの砂はもうなくなっていた。



「いつ破けたんだよ?」とパドスは聞いた。



「さあな。スライムと戦ったときかもしれないが……」



パドスは、腰に下げた自分の砂袋を取り出し、リヌクに差し出した。「さあ、これを」



「いや、それは、お前のものだ」



「だけど……」



「もう、遅い」リヌクは、自分の足を軽くたたいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る