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旅人にとって一番恐れるべき存在は盗賊であったが、今いる土地のような人間がほとんど行き来しないような場所では、彼らも生き延びていくことはむずかしく、彼らに遭遇する確率は極めて低かった。
さらに、最近になって増え始めた怪物や魔物の類も、この土地に着てからはほとんど見かけることはなかった。
リヌクが、石になったおじいさんを運ぼうという気になったのも、このような要因があったからだ。
少し先に岩場が見える。
リヌクとパドスは、そこで一夜を過ごすことにした。
リヌクは、旅の途中で拾ってきた木の枝で火をおこし、そこで大豆の缶詰を火のすぐ近くに置いて温めた。
缶詰がぐつぐつと煮えたぎると、木の皿を取り出し、そこに缶詰の豆を半分ほど入れた。
「さあ食べなさい」リヌクは、近くに座っているパドスにその皿をさしだした。
「ありがとう」と言って、パドスはその皿を受け取った。
「塩しかないが……」リヌクは、皿を渡した後、袋から塩をつまんで、その皿の豆に振りかけた。
パドスは、その豆を何も言わずに口の中に運んだ。
それは詰め込むだけの食事だった。
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