29

「パドス、何をした?」と、リヌクは近くにいたパドスに向かって言った。



「たまに、こういうことが起きるんだ。でも、自分でも何が起きたのか分からなくて……」



リヌクは、パドスの額にある二本の傷口から光が漏れていることに気づいた。



だが、その光は、気づいてから数秒後にスッと消えた。



「不思議なこともあるものだ。そういえば、空から不思議な光が差していたな。死の風がなんらかの力を及ぼしているのかもしれん」



リヌクは、そう言った後、ようやくラバとパドスが無事だったことへの安堵感が出てきた。



「パドス、それにしても無事でよかった」リヌクは、パドスの頭を太い両手でがっしりとつかんで、その存在を再確認した。



橋の場所からしばらく歩くと、次第にあたりは薄暗くなってきた。



このあたりには、街らしいものもなく、また、今歩いているところは大きな街と街をつなぐ道でもなかったため、人の姿を見かけることはほとんどない。



また、死の風が吹くような場所には、誰もが恐れて近づこうともしなかった。



旅人の精神が深く根付いているリヌクのような者以外は、危険を冒してまで、このような土地に来ようと思うものはいないだろう。



しかし、死の風がもたらすのは、不利益だけではなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます