25

幸い、リヌクの体はその橋の崩壊の影響を受けることなく無事だったが、ラバの手綱を離せば、ラバと荷車は川に落ちてしまうであろう。



「無理だ。ラバと車は捨てていく!」リヌクは叫んだ。



「ダメだよ! おじいさんを見捨てるわけには行かない」



と、パドスが向こう端から叫んだ。



「こういう状態でどうしろっていうんだ」



リヌクも、橋の上でラバの手綱を力いっぱい引っ張っているが、ラバは一歩も動かない。



橋板がきしる音が聞こえてくる。



リヌクの足元にも、その音とともに、橋板の振動が伝わってきた。



このまま橋か崩れててしまうと、リヌクもその巻き添えになって、川に落ちてしまう。



「すまん、パドス」と言って、リヌクは、ぴんと張った手綱を離した。



リヌクは、自分が助かるために、こうするしかなったのである。



その瞬間、ラバは、後ろの荷車に引っ張られて、前の片足が宙に浮き上がった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る