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幸い、リヌクの体はその橋の崩壊の影響を受けることなく無事だったが、ラバの手綱を離せば、ラバと荷車は川に落ちてしまうであろう。



「無理だ。ラバと車は捨てていく!」リヌクは叫んだ。



「ダメだよ! おじいさんを見捨てるわけには行かない」



と、パドスが向こう端から叫んだ。



「こういう状態でどうしろっていうんだ」



リヌクも、橋の上でラバの手綱を力いっぱい引っ張っているが、ラバは一歩も動かない。



橋板がきしる音が聞こえてくる。



リヌクの足元にも、その音とともに、橋板の振動が伝わってきた。



このまま橋か崩れててしまうと、リヌクもその巻き添えになって、川に落ちてしまう。



「すまん、パドス」と言って、リヌクは、ぴんと張った手綱を離した。



リヌクは、自分が助かるために、こうするしかなったのである。



その瞬間、ラバは、後ろの荷車に引っ張られて、前の片足が宙に浮き上がった。

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