22
冷たい風が、スーと通り過ぎた。
パドスは、その風を受けて、急に呼吸が乱れてきた。
そして、風が完全に止まったとき、「さようならー!」と、一言遠くの村に向かって叫んだ。
彼の呼吸と心臓の鼓動は、さらに激しくなった。
行き場を失った感情が、喉から飛び出してきそうだった。
パドスは、その感情を抑えきれずに、「さようならー!」と、もう一度叫んだ。
パドスは足の力が抜けて、地面に両ひざをついた。
そのまま両手も地面に付けて、四つん這いになった状態で涙を流した。
「パドス、時間はあまりない。この橋を渡ろう」と、リヌクは言った。
この橋は、単純な構造の橋脚もない木の橋で、落下防止用の欄干などは設けられていなかった。
切り立った岩と岩の間にかけられていて、六、七メートル下には、猛烈な勢いで川の水が流れている。
橋幅も、荷車がかろうじて通れるくらいで、そこから少しでもはみ出そうものなら、たちまちバランスを崩して激流の中へ落ちてしまうだろう。
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