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しばらく釣竿を振り回していたパドスであったが、その動作が急にぴたりと止まった。



その後、釣竿を片手に持って、リルを顔面にのせたリヌクのところまで近づいてきた。



不可解な猫の動作と少年の行動に、リヌクは数分先のことでさえどうなるのか想像がつかなかった。



パドスは、仰向けになっているリヌクの顔の横に、持ってきた釣竿を置いた。



そして、両手の手のひらを上に向けてリヌクに差し出し、この釣竿を使ってくださいというしぐさをした。



……こんな状態で、私が釣りをしたいとでも思っているのか。



リヌクは、心の底でそう叫んだ。



リヌクは、パドスの行為に対するあまりの苛立ちに、「違う!!」と、大声で叫んでしまった。



その声に、今まで隙のない緊張感を保っていたリルは、一瞬肩をびくつかせた。



それから、一秒も経過しないうちに、低いリルの鳴き声が平野に響いた。



このとき、リヌクの顔に軽い痛みが走ったが、同時にその痛みを忘れるほどの不思議な感覚にとらわれていた。



リルは、パドスのもとに駆け寄って、ぴょんと胸に跳び込んでいった。



その毛は一瞬のうちに白くなり、ニャーという普通の猫の声をあげた。

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