10

リルは、大きな紫色の目をしていたが、その目をじっと見ると、リヌクは自分の心が読まれているような不思議な感覚を覚えた。



リヌクは、蛇ににらまれたカエルのように、身動きひとつできなかった。



リルの四本の足は、じりじりとリヌクの首から這い上がって、前足がリヌクの頬の部分にかかった。



リルの動作には、一瞬たりとも無駄がなかった。



リヌクもどうにかして、この危機的な状態を逃れようと思ったが、なにしろただの猫ではない。



その動きを妨げたら何をされるかわからないのだ。



こうなってくると、もはやリルがこの場から立ち去るのをじっと待つだけだった。



リルの前足の爪は、深くリヌクの頬に突き刺さったまま、動かなくなった。



その爪は、皮膚を貫通するほどの力はなかったが、軽い痛みが途切れなく続いた。



しばらくその沈黙は続いたが、その間にも、リヌクは、なんとかして逃げる方法はないかと、視線をあちらこちらに移していた。



口にはリルの腹が乗っかっていて、何もしゃべることはできない。



もはや、流れにまかせるしか手はないのか。

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