10
リルは、大きな紫色の目をしていたが、その目をじっと見ると、リヌクは自分の心が読まれているような不思議な感覚を覚えた。
リヌクは、蛇ににらまれたカエルのように、身動きひとつできなかった。
リルの四本の足は、じりじりとリヌクの首から這い上がって、前足がリヌクの頬の部分にかかった。
リルの動作には、一瞬たりとも無駄がなかった。
リヌクもどうにかして、この危機的な状態を逃れようと思ったが、なにしろただの猫ではない。
その動きを妨げたら何をされるかわからないのだ。
こうなってくると、もはやリルがこの場から立ち去るのをじっと待つだけだった。
リルの前足の爪は、深くリヌクの頬に突き刺さったまま、動かなくなった。
その爪は、皮膚を貫通するほどの力はなかったが、軽い痛みが途切れなく続いた。
しばらくその沈黙は続いたが、その間にも、リヌクは、なんとかして逃げる方法はないかと、視線をあちらこちらに移していた。
口にはリルの腹が乗っかっていて、何もしゃべることはできない。
もはや、流れにまかせるしか手はないのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます