第3話「お金は大事だよ。」

 何か注文しないのも悪いだろうと思い、チキンカレーがあったのでそれを先ほどの巨乳の金髪ウェイトレスに注文した。

 うむ、なかなかうまい。レトルトではないようだ、いわゆるインドカレーでもなく普通の日本のカレーである。昔ながらのといった感じではあるが最近はインドカレーばかりを食べていたので、たまにはこういう日本的カレーも悪くないものだ。

 普通こういうコスプレ的なカレーはレトルトと決まってるのだが、それをしていないだけでも大したものだ。しかも値段も300と破格だ、いまいち単位がよくわからなかったが、そういうコンセプトの店なのだろう。

 

 さてとにかく会社に戻って、ルシアのやつを懲らしめないとな。まずはここがどこか分からないと話にならないから、さっきのマジシャンのウエィトレスに支払うついでに聞くとしよう。


「すまんお会計を頼む。」

 レジといったものが見当たらなかったので、その場でさっきの女の子を呼び止めた。

「あ、はーい。お客様は300ミニーになります。」

 ミニー?あ、ミニーって読むのかこれ、マネーから来てるんだろうな多分。

「すまん、細かいの無くて、1万円からで頼む。」

 私は財布からみんなが大好き諭吉さんを出して、彼女に渡そうとした。

 しかし、彼女は受け取らず首をかしげるのみ。

「あの、なんですかこれ。」

「ん、だめなのか。なんかチケット制かなんかになってるのか。じゃあこれでチケットを買うんだが。」

 なんてことだ、チケット制ならばきっと1000円単位だろう。300円で済むつもりが高くつきそうだな。しかもどうしようかな、もし1ミニー500円とかだったらこんなカレーが1500円になってしまう。私のお小遣いは少ないのだぞ。


「あのそうではなくて、この紙切れ使えないんですけど。あのひょっとしてお金持ってないんですか。」

 いぶかしそうにウェイトレスはこちらを見つめる。

 なんだか冗談を言ってるような感じにもみえない。

「あ、いや。ちょっと待って、君本当にこれは使えないといってるのか?」 

 私は一万円札をひらひらとさせながら、彼女に訴えかける。泣く子も黙る一万円さまだぞ!と


「……ははーん、お客様さては異世界から来たとかって人ですね。たまにいるんですよね、お金を持ってない人が……。1か月前にも一人いました。本当は労働で払ってもらうしかないんですけど……。」

 なんだ、とうとうこの子自身が異世界って言いだしたぞ、

 なんだよ、ルシアの言う通りここはマジで異世界ってやつなのか?

 

「でもまあ、お客さんの場合は特別に私が代わりに払っておいてあげます。代わりにお願いがあるんですけどいいですか。」

 ん、なんか思わぬ方向に話が進んでるぞ。 

 いいも何も選択しなど私にはない。お願いが何かはわからないが、こんなところで食い逃げ犯にでもされたら出世に大きな傷がついてしまう。


「そ、それは助かる。聞けるお願いならということになるんだが、いいだろうか。」

「あ、はい、たぶんあなたなら問題なく聞けるお願いだと思います。」

 なんかよくわからないがちょうどよかったな。私もこの子から、今の状況を聞き出したいところだったし。

「すまない、ほんとうに恩に着る。」

 私はそういって深々と頭を下げた。


 どうも私は昔からピンチとか困ったことが起きると、勝手に女が現れて、助け舟を出したり、もっと直接的に解決してくれることがある。どうもそういった星の下に生まれているようだ。


「あのそうしたら、あと3時間で私の仕事が終わりなので、その時間にこの店の裏手でも来てください。いいですね、絶対ですよ。」

 そういって、目の前の巨乳マジシャンウェイトレスは私に右手を差し出してきた。私はがっちりとその握手に応える。

 心配しなくても私、課長浜勇作は女との約束だけは破ったことはあまりない。

 一応にと思って、私が彼女に自分の名刺を差し出そうとすると、その名刺からは株式会社赤丸の表示と、課長の肩書がなくなっていた。


 代わりに『勇者 浜勇作』という名前のみが明記された名刺を、この女の子に渡すことになってしまった。

 

 おのれ、ルシアめそこまで徹底するか……。





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