第7話 禁断の書
「なあに、これ?」
一冊の書物を渡された鈴玉は、首を傾げた。書物の持ち主は同輩の「
しかし思いがけなく王妃づきとなった鈴玉のように、鸚哥は今を時めく
さして出来の変わらぬ同輩が、自分の
それはともかくとして、二人の若い女官がいるのは、
「『……かくして、
そこまで読んで、鈴玉はぱたんと書物を閉じた。うなじは真っ赤で、頬も上気している。
「……どこからこれを?」
「続きを読みたい?何しろ大人気で、やっと私のところまで回ってきたのよ」
「そうじゃなくて!」
鈴玉は、思わず大きな声を出してしまった。
「しっ、声が高いわよ」
「
「あら、女官見習いとして成績が最下位だったあんたもその戒めは覚えてるのね、大したもんだわ」
「茶化さないでよ」
鈴玉の抗議に、鸚哥はにやりとした。
「そんなの建前に決まっているじゃない。後宮のお妃さま達だって、年増の女官に
「そうなの?」
全く、鸚哥はこのような知識や見聞だけは、人並み以上に仕入れているのだから……鈴玉は呆れるやら感心するやらだが、自分の掌が艶本の表紙を撫でていることは自覚していない。
「お妃さま達の御覧になる御本はこんなものではなく、もっと仕立ても書も絵も豪華なんですって。まあ、それはともかく、これは『持ち込まれた』ものじゃないのよ」
「え?何よそれ。じゃあ、誰かがこの後宮で書いているとでも?」
「そういうこと。とにかく、私は読み終わったんで、あんたにも回してあげようと思っただけ。ねえ、読むの?読まないの?」
***
(注1)「鍾馗」中国の民間信仰の神。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます