第4話 鎖の正体
「はぁ…五月蝿いねぇ、今から交渉すから静かに待っててくれないかなぁ?」
頭の中で未だに鳴り響く音を振り払う様に頭を振り溜め息を一つ吐いた。そしておもむろに鎖に手を置く。
「君?君たち?かなぁ?まぁどっちでも良いけど一つ交渉をしないかい?もし理解しているなら動いてくれないかなぁ?」
鎖はマギの言葉に反応するかのようにじゃらじゃらと音を立てて微かに動いた。
「やっぱりねぇ、僕がある能力を使用したさいにまず遺伝子情報の前に一つの詳細が明かになるんだよねぇ。それが血脈情報なんだけど、本来は
じゃらじゃらと鎖が激しく動く。
「君の遺伝子情報も見て僕なりの推測を立ててみた。多分君は魔力が無いと生きられない、そして生きる為に誰かにそそのかされて鎖に変化し、フェニの魔力を食べて生き永らえているじゃないかなぁ?」
洞窟内は生唾の呑み込む音が響くくらいの静けさが支配し、そして更に言葉を繋ぐ。
「それでここからは交渉なんだけど…君、僕の使い魔にならないかい?前に契約魔法の本を読んでいてね、相手に条件を提示し了承を得てから膨大な魔力を消費して公使出来るんだけどどうかなぁ?
あっもちろん契約前に意思疎通が出来るらしいから嫌なら断ってくれてもいいよ…ただ、その時は無理矢理鎖を外さないといけないけどねぇ」
鎖はじゃらじゃらと動いた。
「いいってことかなぁ?まぁ意思疎通したら分かることかなぁ……じゃあいくよ?」
体内にある血液を魔力に変えていくと同時に変換され無くなった血液を生成していく……だが、ここで一つの問題が出てきた。
「うっ……僕としたことが…生成が追い付かない…うっ、ごめんねぇもう少し待ってくれるかな」
血液が少なくなり顔が青白くなっていく、しまいには片膝を地面に着け顔を歪ませていく。
「なる…ほど…ねぇ、僕、自身の…問…題点を理…解した…よ…………ふぅ、よう…や…く…たま…った」
マギは顔色を戻しながら己の血で貯めた魔力を掌に集めていく。
「たしか…我、この者と契約を執り行いたい者、我はとこの者が互いに了承せし時、契約は成就されるなり【絶対なる契約】発現せよ」
契約の言葉を唱え終えると目の前に二枚の光輝く紙が現れ辺りを包み込む。
眩しさの余り目を瞑っていたマギが目を開くとそこは真っ白い空間だった。そして目の前には黒のメタリック色をした丸い物体がいた。しかもただの丸い物体ではなく目と口が付いていたのだ。
「んーん、
「そうだよ、僕が鎖に張り付いてたスライムだよ」
「じぁ早速だけど契約じょ……」
「ちょっと待って!先に聞きたい事がある」
マギは突然の待ったに少し困惑した顔をしたが直ぐに笑顔になり口を開いた。
「いいよぉ、僕が答えられる事なら何でも教えてあげるよ?」
「マギと言ったかな?なんで僕と契約をしたい?僕は形状変化と他者からしか魔力を食べれない事、そして《食べた物を出し入れ出来る》だけしか出来ない無能なスライムだよ?同族からは無能だと忌み嫌われているし、実際問題で他者が居ないと生きる事もままならないよ」
スライムの目には段々と涙が貯まっていく。
「正直、殺して欲しいと思った事は何度もあるよ。でも……こわ…く…て…ひっぐ…ほん、と、うは…ひっぐ…生き…た、ひっぐ…い…おな、か一杯、たべ、たい、よぉ…でも…やく、ひっぐ…に、たたな、い、から…すて、られ…ひっぐ…たく、ない…ひっぐ」
スライムは貯まっていた涙を流し言葉も辿々しくなっていった。
だがそれとは裏腹にマギの顔が笑顔から段々と無表情に変わっていった。
「誰に?誰が?役にたたない?無能?実に不愉快だよ」
急に冷えきった声に変わったマギにスライムは恐怖を感じ泣いていた事も忘れ我に返った。
「だ、誰って…ぼ、僕が同族や魔族達に……」
スライムは恐怖のあまりぼそぼそっと返答するしか出来なかった。
「あーしまったねぇ、僕としたことが感情に捕らわれてしまったよ。ごめんねぇ君は一つも悪くないのに、それでだけど先に条件を伝えるねぇ」
先の質問の答えを貰ってないが頷くしかなかった。
「僕の条件は君に僕の実験にたって貰いたい事かなぁ。その代わり君は僕の魔力を食べて貰って構わないし、君が受けたダメージなどは僕が肩代わりする。それと僕が死んだ場合は僕を好きにして構わない…そんな所だけどどうかなぁ?」
目の前の子供はどんなに低く見積もっても自分が不利になる条件を言っている。
スライムは何かしら思惑があるに違いないと思う一方で何故か心が暖かくなっているのを感じていた。それが何なのか解らないが、今感じてる事を言わないと後悔する気がしていた。
「どう…して…?僕は何の役にたたない魔力を食べるだけのスライムだよ?なのに…なのに、お前は…」
「今まで頑張ったねぇ、君が回りからなんて言われてたか知らない、けどそれは僕に関係あるのかなぁ?いや関係無いねぇ、誰がどんな事を言おうが僕は君が必要なんだ。君はどう思ってるか知らないけど、僕は君と出逢えたことを感謝すらしているよ?そして、僕は決して君を裏切らないし見放したりしないよ」
今まで誰にも言われたことがない言葉にスライムの目からは先程とは違った意味の涙が自然に溢れてきた。
「………あり、がどう」
マギはスライムが落ち着くまで暫くスライムの頭?を撫でていた。
「…うん、落ち着いてきたよ…それで何だけど…条件に一つ付き足してもいいかな…?」
「君が納得するなら、好きに足してもいいよぉ」
「じゃ、じゃあおま…いや、マギが死んだら僕も死ぬようにして欲しい。それと…僕に名前を付けて?」
「僕が死んだらってそれじゃあ…いや、野暮なことは聞かないよぉ?後は君の名付けだねぇ、少し考えるからまってくれるかい?」
スラリン?…スラ吉?…うーん違うねぇ…亜空間スライム…あくうかん、スライム…あく、スライム…うん、きめた。
「決めたよ、君の名前は【アスラ】だ。もし気に入らなかったら言ってねぇ」
「…アスラ…アスラ…へへへ、気に入ったよ、ありがとう。マギこれから宜しくね」
(契約は成されました。契約を破棄する場合は両者の承認が必要です)
何処からともなく声が頭に響き、又も光に包まれ光が収まると元の洞窟に戻っていた。
「ふむ、これが契約魔法か…実に興味深いねぇ…後々の研究テーマにするのも悪くないねぇ」
『聞こえるマギ?契約のお陰でマギと念話で話せる様になったみたい。それで…もうマギの所に行っても良いかな?』
『ああ、気付かなくてごめんねぇ。もちろん着てくれて構わないけど…少し待ってくれるかな?』
マギは鎖に触れ一言声を発す。
「
そういうと魔石を縛っていた鎖から赤い血が滴り落ちる。
『アスラの中に無理矢理混ぜられてた
『んん?わぁ体が軽くなったよ?』
『
縛っていた鎖は徐々に形を変えていく…
ものの数秒で拳大の丸い形に変わりマギの肩に乗っかった。
『改めて宜しくねぇアスラ』
『宜しくマギ』
『グォォォォォー』
鎖が取れたことにより魔石が赤く光輝く。
光が収まるとそこには、元に戻った
『よくぞ解いてくれたマギよ、礼を言う。してその鎖だった忌々しいスライムを渡してはくれぬか?色々と礼をしたい』
「そうだねぇ、もちろん断るよ」
Knowledge&DNAmagic 創士狼 @sooshirou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Knowledge&DNAmagicの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます