第3話 初実験
ポタ……ポタ……ポタ……
「ん……?ここは……?洞窟……?」
僕は…そうだ、父さんの話を聞いてる途中で…後頭部を…つぅー!?
痛みが残る後頭部を擦りながら辺りを見渡す。
「奥?から光?外かなぁ」
んー、どのみち状況がわからいし光がある方に行こうかねぇ。
マギは、なんの戸惑いもなく光がする方へ歩いていく。
やがて開けた場所にでる、そこには黒い鎖で縛られた大きな魔石が置かれていた。
『起きたか人の子よ…』
唐突に頭に鳴り響く声、だが決して恐ろしい感じはせず寧ろ慈愛に満ちた心地のいい声に感じた。
「うーん…?念話?もしかして、魔石からかなぁ?」
『如何にもだが…お前は我が恐くないのか?』
「恐いも何も僕は攫われただけで、まだ何もされてないしぃ…あっ今から何かするのかなぁ?」
『…攫われただけ…子供には十分過ぎるとは思うがまぁいい、人の子よまずは無理に連れてきた事を…』
「あーそういうのはいいからぁ、今の状況とあなたの名前、なぜ魔石なのに意思があるのか僕を連れてきた方法と理由を簡単に分かりやすく答えてほしいかなぁ」
マギは本当に謝罪などどうでもよかった、寧ろこの状況に感謝すらしている。なにせ相手は本でも見たことの無い意思を持つ魔石、その上こちらを害する気が無い。だったらマギの取るべき行動は一つは知りたい事をとことん聞いて自分の知識にするそれだけだった。
『そ、そうか、まずは我は
マギは頭の中で本で読んだ魔物に関する事を思い出していく。
ん…たしか、
『今の状況は同胞の裏切りによりこの忌々しい鎖に封印されておる。我は不死故に魔石になっても意思を持つことができる。それとお前を連れてきたのは封印から漏れでた我の分身によるもの、何故連れてきたかはもしかしたらという直感としか言いようがない』
なるほどねぇ、要するに僕に封印が解けるかもという直感を頼りに連れてきた訳か…
『して、我から聞いてもよかろうか?』
「どうぞぉ」
実は
『では、お前の名を聞きたいのと…我の封印が解けるかどうかだが』
「そういえば、僕も名前言って無かったねぇ。僕の名前はマギ、それと封印だけど触っても?」
『マギか、良い名だ。それと鎖に触れるのは止めておいた方がよい、我の血を媒介にしておるようでな触れただけでその身を焦がす事になるだろう』
「うーん…それだと…ん!?血を媒介…血かぁ、カイ…長いからフェニと呼ぶねぇ。フェニその鎖に直接触れなければ大丈夫かなぁ?」
『……好きに呼ぶが良い、それと鎖に直接触れなければ大丈夫だと思うがどうする気だ?』
それを聞いたマギは口元を大きく吊り上げ、腰に携えてた血魔剣ブラッドに手を掛けた。
「こうするだよ」
血魔剣ブラッドを引き抜き鎖に突き刺した。
『なっ!?』
フェニは若干驚いたものの弾き返された短剣を見てやはり無理かと思っていた。
だが、マギの様子は違った。吊り上げた口元を一層引き上げ更には若干鼻息も上がっている。
「この短剣…やっぱり僕と相性が良いねぇ。父さんも良いものをくれたよ…さて、ここからは命を賭けた味見をしようかねぇ」
アレンがマギに渡した血魔剣ブラッドには実は二つの能力が備わっていた。その内の一つが切りつけた相手からの血の採取である。
フェニは先程、自分の血が媒介に使われてるといった。だからもしかしてと思い短剣を鎖に突き刺したのである。結果、極少量ではあるが血の採取に成功した。
そしてマギは血魔剣ブラッドで採取した血を舐め取る。途端に全身を炎が覆うが、あらかじめ痛覚を分離させておいたので感じるのは熱さと皮膚が爛れていく感覚だけだった。
ふむ…この炎、耐えられるのは良くて五分といったところか。早々に実験に取り掛からないとねぇ。
マギは血の知識により血が持っている情報の分別と分離、DNA結合を開始する。
まずは分別、OR遺伝子、IF遺伝子、BG遺伝子、BMF遺伝子、SF遺伝子、DF遺伝子…主にこの六つの遺伝子が
【血の知識による遺伝子の詳細】
OR遺伝子…
IF遺伝子…
BG遺伝子…
BMF遺伝子…血液魔力変換、自らの血液を魔力に変換使用出来る遺伝子。
SF遺伝子…聖炎、聖なる炎を使う事が出来る遺伝子。
DF遺伝子…魔炎、闇の炎を使う事が出来る遺伝子。
なるほどねぇ、この炎はIF遺伝子によるものだねぇ。本来はOR遺伝子のお陰で血液の状態を保っていると言ったところか…それとOR遺伝子は常に魔力を使用するが、BMF遺伝子が魔力を常に供給しBG遺伝子が供給元である血液を生成する。SF、DF遺伝子はさておき実に完成された遺伝子構図だろうか。
マギは感心しながらも最後の工程であるDNA結合を開始する。
すると徐々に炎が収まっていき、爛れていた皮膚も元通りに戻っていく。
「ふぅー、初実験は無事成功の様だねぇ」
『マギよ?一体何をしたのだ?先程と違いマギから同族の気配がするのだが?』
フェニはマギが鎖に短剣を突き刺す前と気配が大きく変わった事に違和感を感じていた。
「そうだねぇ、詳しくは言えないけどフェニの同族の気配はあながち間違ってないよ?だって今の僕は人の姿をした
『……は?』
フェニは今言われた事に理解が追い付かない。
「まぁそんなことより先に生きている鎖を解くねぇ」
『生きている?…………はぁあ!?』
フェニの驚きの声が頭に鳴り響くのだった。
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