第2話 フラグの回収は突然に……

僕が産まれてから早四年…色々な事が判ってきた。まずは第一に僕は別世界に記憶を持ったまま生まれ変わったという事。


現在の父はアレン元オリハルコン冒険者、母はモニカ元宮廷魔法師、長女はマリア十歳で【雷帝】の称号を持っていて、長男はキール九歳で【聖騎士】の称号を持っている。


そして今居る場所はコイル王国にあるトイラ街。両親とも仕事はしていないが、なんでも現役時代に稼いだお金で自由気ままに暮らしているようだ。


この世界の生活基準は中世ヨーロッパ位のレベルだが、魔法というものが存在する為に歪な発展を遂げている。


食とお金に関しては現状興味が無いので気にしてないが、冒険者でそれなりになれば稼げるようだ。


そもそも冒険者とは…地球のいう所の何でも屋みたいな職業だが少し違う所がある。それは地球では居なかった魔物との戦闘だ。


魔物は昔から居るとしか分かっていないがその血肉は住民の糧になっている。

僕としては是非とも研究したいと思っている題材の一つだ。


僕は手に入れたこの知識を更に増やす為に母さんの書斎に籠っている。幸いにも母さんは本を集めるのが趣味のようで多種多様な本がごまんとある。


「マギー?あっ!またここに居たのね?マギは本当に本が好きなのね」


「うん、母さん。でも、ここにある本は殆んど読んじゃったので以前母さんが言ってた王国図書館に行ってみたいなぁ」


「もう読んだの!?流石は神話級の知才ね…あっ、王国図書館はいずれね。それはそうと今日は森に行くんじゃ無かったの?アレンが呼んでたわよ?」


「…忘れてた、母さんありがとぉ。父さんの所に行ってくるねぇ」


僕は読み掛けの本を直し父さんが待っているだろう玄関に急いで向かった。


「いってらっしゃい……あの子…ここにある本を殆んど読んだのよね…私でも難しい本も在るのに…やっぱり称号が関係有るのかしら?いでんし?こうがく?だったかしら…一体どんな称号なのかしらね…」


モニカの呟きは玄関に向かった我が子には聞こえる事が無かった。


「父さんごめん忘れてたぁ。僕から言い出したのに…」


僕は玄関で待っていた父さんに頭を下げた。


「やっときたかマギ!いい、いい、そんな事で父さんは怒ったりしないぜ?なにせ父さんもよくモニカとの待ち合わせをすっぽかしてたからな!」


父さんは豪快に笑っているが、内容は自慢出来るような事でも無い。


「それよりもいつも本を読んでるマギが森に行きたいと言ってくれたのがうれしいぜ」


「ある程度知識を身に付けたので実際に色々見たいと思ってたので…それでねぇ、これから毎日色んな所に連れていって欲しいのたけど?ダメかなぁ?」


「ああいいぜ!取り合えず半年位は紫炎の森に行く予定だ。あそこは近いし出てくる魔物も弱っちいやつばかりだから丁度いいからな」


紫炎の森か、たしかに出てくる魔物もブロンズ級やシルバー級ばかりだから最初の実験体モルモットを探すには丁度いいかも知れないねぇ。


「分かりました父さん。僕は何を持っていけばいい?」


「ん?あーそうだったな、ちょっと待てよ……これなんてどうだ?」


父さんの手から渡されたのは一本の短剣、刀身から柄まで真っ黒で刃の真ん中に赤い太線が一本柄まで伸びている。


「そりぁあ俺の家に伝わる短剣だ、名は血魔剣ブラッド。なんでも遠い祖先が吸血鬼だったらしくその時に使ってた物みたいんだが…魔剣の癖に今一つパッとしないんだよな。まっ、普通に斬る分には問題ないだろうし、飾っとくのもアレだしマギが使えばいい」


手に取った魔剣をまじまじと観察してみる…

んっ…?何と無く使い方が解る気がする…僕の血統能力【血の知識】のおかげだろうか?んーん、取り合えず実験して検証だねぇ。


「ありがと父さん。大事に使わせて貰うねぇ」


「おうよ、他の荷物は俺のマジックバックに入ってるから要らないぜ?それとくれぐれも俺の側を離れるなよ?流石に離れられると守れねえからな」


「わかったよ父さん」


ごめんねぇ父さん、実験体モルモット探しと実験の為ににならないといけないんだよねぇ。


そう心で呟きながらアレンと共に紫炎の森に向かうのだった。



ーーーーーーー


「ぐぎゃぎゃぎゃ…ぎゃあ!?」


身の丈程の大剣を軽々と降り下ろす。

一体の小鬼ゴブリンは真ん中から左右に体が別れる。


「これで十九体目か、ほんとこの森は小鬼ゴブリンが多いな」


「そうだね父さん、でも僕には丁度いいよ?」


確かに多いねぇ、僕もそろそろ他の魔物も見たい所だけど…今日は駄目かもねぇ?


「もうすぐ昼だ、飯食ったら今日は帰るぞ」


「そうだね、初日だし僕も疲れたよ」


ほんとはもっと居たいけどぉ、流石に四歳の体では限界かねぇ。


二人は小さな泉の畔に腰を卸し持ってきた食糧を頬張った。


「なぁマギ?お前の称号って………いや止めとくわ。いくら頭が良くたって四歳のお前が知るわけ無いしな。悪い忘れてくれ」


父さんの聞きたい事は分かってるよぉ?でも、それに答える事は今は出来ないかなぁ。いや、例え出来たとしても理解出来るわけもないかなぁ。だって、この世界にあるはずもない学問だしねぇ。


称号【遺伝子工学】追随する能力はDNA結合と分離だけであるが彼がこの能力を知った時これ程歓喜したことはない。


なにせこの世界に地球のような機械は無い。マギが前世で使っていた精密検査機器なんてもってのほかでありマギは若干落胆した。だか彼のDNA結合と分離さらには血統能力である【血の知識】が判明したことよって全ての問題が無くなったのだ。


まずDNA結合は自分の思い通りに遺伝子を結合することができ、分離はあらゆる事を切り離し保存することが出来るが制約もある。それはそれが何かを知らなければならない事だが、これは血の知識により解決する。血の知識は、血を摂取することにより成分を理解することが出来る。


これにより、マギの能力だけで前世の研究、実験が出来る事が判明した。


「…そうだね、流石に僕もわからないやぁ」


今はごめんねぇと僕は心の中で謝罪をした。


微妙な空気の中、二人は昼飯を無言で食べていた。程無くしてアレンがこの空気に耐えきれず口を開いた。


「そういやマギ、この森は今でこそ紫炎の森って言われてっけど、昔は子攫こざらいの森って言われてたんだ」


「……?」


「なんで急にこんな話をフッたって顔してるな……まぁ聞けよ。当時、この辺りを通る特定の行商人がよく襲われていたんだ」


「特定?」


「そう、当時冒険者だった俺は依頼を受け調査していた。調査の末ある事実が判明した…それはなオリハルコン級の称号持ちで四歳までの子供だけが攫われていて、しかも数日後何事も無く親元に帰っていたみたいなんだよ……んっ?マギ聞いてるか……?」


アレンは我が子が居る筈の場所を振り返りみるみる顔が青ざめていく。


「おいっ!?嘘だよな!?マギ隠れてるんだろ?なぁ!?……マギーーー!!」


マギはいつの間にか消えてしまった……フラグの回収と共に……

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