知りたくて~2~

 今日も今日で僕は本屋の前を通る。そしてやっぱり、あの人はいる。同じように本を持って立っている。

 今日は見る。何を読んでいるのか、そして奥に行ったら何処にいたのか。


 そっと近づく、音を立てないように、気配を消して。それでもバレてしまったのだろう。あの人は本を置き奥へと歩いていってしまう。すぐさま置かれた本を確認する。あれ、どれだったか。大変だ。ここで考えていたら後ろ姿を見失ってしまう。


 すぐに向こうへ目を向けると、曲がっていくのが見えた。左に行ったということは、追いかけるより左の棚から見たほうが早い。


 歩いていった通路を見つつ、左のほうも同時に見る。そうすれば、あの人の横顔か正面が見えるはずだった。


 はずだったというのは、実際には見えなかったのだ。どちらも。どちらも見えなかったし、どの向きでも見えなかった。


 要するにいなかったのだ。あの人は何処にもいなかった。


 突然いなくなったあの人は一体何処に行ったのか。あんな状況で見逃すなんてありえるのか。考えたところで答えは出ない。それなら、自分で確かめるのみ。


 僕は何度もあの人がいる本屋に行った。奥に歩いていこうが追いかけた。もちろん、気付かれないように。


 ただ本当に気づかれてないのかは不明だ。あの人はいつも奥に行って左の棚のほうに向かう。そして消える。本当に消えたようにいなくなる。

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