知りたくて
三日、四日と同じ通りを同じ時間に通っているが、なぜだろう。あの女の人もまた同じ場所に立っているのである。
何時からいて何時までいるのかは分からないが、短時間ならばこう毎日見かけるとも思えない。そして何を読んでいるのか。全く分からない。持っている本の表紙は、女の人が動かない限り見えない。
そう、あの人は僕が見ている間、ぴくりとも動かない。本屋にいて、立って本を持っているのに本当に生きているのかと錯覚してしまうほどだ。
近くで何を読んでいるのか見てみたい、そう思った。いや、これは後付けでここに生きて立っているのかを確認したいのかもしれない。
そっと僕は近づいた。すると、本を持っていた手は本を置き、そして奥へと歩き始めた。
なぜだか僕は感動した。
動いて、生きていると感じたからだろうか。
どのくらい経ったのだろう。きっと一瞬のことだ。後ろ姿から目を離した隙に、いなくなってしまっていた。
本屋から出たようには思えなかったが、見逃してしまっている可能性もある。仕方ない。帰ろう。何も進んでいないように見えて、ちゃんとあの人は生きていると分かったのは大収穫だ。
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