本中物語

福蘭縁寿

始まる物語

 毎日通るこの道。この通りは商店街のようになっている。

 その中に小さめの本屋がある。すぐ見える範囲の棚はアニメ・ドラマ化作品や新刊などが置いているが、奥の棚は懐かしいどころじゃない程の本が並んでいたりする。店長の趣味としか思えないラインナップだ。僕はそんなマニアックな本屋に足を運んだことがなかった。

 

 今後も行くことはないと思っていた。だけど、僕はそこに行くことになる。目的は本、ではなかった。

 

 通りを歩いているといつもは気にならない本屋になぜか視線が向いた。入り口側の棚の前に女の人が立っている。ふくらはぎ程の丈のスカートにカーディガン、髪は肩より少し長いくらいだ。

 特に変わった見た目をしているわけではない。

 

 それなのに目が離せなかった。

 何が気になるところなのか分からないまま僕は家に帰った。

 

 次の日また同じように本屋にいる女の人を見るまで、すっかりこの出来事を忘れていた。

 

 今日もまた目が離せない。といっても、道のど真ん中でぼうっと突っ立っているわけにはいかない。じろじろ見るのも良くはない。そして僕はまた真っ直ぐ家に帰るのだ。

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