第34話 見ないでね?

 *おだやかな詩が創れました。


『夜毎のマリア』その2


 夜毎のマリア 捜してる

 明かりをつけてみようか そっと音楽をかけようか

 横たわる体は 知らず疲れている

 指にからみつく髪をたぐって 放つ

 おまえはそこにいるな?

 やさしい眠りを さまたげる気はない

 今はまどろもう

 信じることのできなかった 未来のために


 ぐずついてる天気のような 黒い胸のうちに

 花開いた運命

 おめでたいね 愛なんて

 そう思うのに 欲しかった

 おまえが どうしても

 泣きたくなるような 闇の中

 静かに 足音立てずにそばに来た

 幸運はあったんだと 信じかけ

 くしゃりと 心をひずませた

 完璧な人生なんて ありえない 信じられない

 だけど おまえだけはパーフェクト


 ひっさげた矜持を いつまでも守ってはいられないさ

 チープなノリに ひきこもうっていうのか

 そんなもの いらない

 たぶん 余計なのさ

 ごちゃごちゃ考えるけれど 投げだせる程度のもんなら たくさん持ってる

 何が欲しい?


 たぶんあいつに 時間は残っていなかった

 オレはかけつけなくちゃいけなかったんだけど

 おまえにおぼれてて 間に合わなかった

 重たいわだかまりと 等価の存在に気づいてしまったから

 おまえはカナリアの声に 眠るけれど

 その実 聞こえてはいないのかもしれない

 軽くはないさ 軽くはない

 だれかのアシストで輝くもんだろ スーパーヒーローだって

 あいつにはそれが欠けてた オレにもな


 成り立たなかった相互関係

 脆弱な約束

 忘れたころに 歌い出すカナリア

 今はことを荒立てたくない

 なかったことにして 音楽を消そう

 まぶたを閉じれば 目指すものがそこにある

 からい後悔と 思い出すほどにこっけいな一幕

 一生 こんなものを背負うのか

 べつに自分だけ不幸だなんて 思ってはいない

 あいつだって 十分不幸だったんだから


 ああ、クソ!


 胸の内で別の誰かが 舌打ちしてる

 オレは幸福だったハズだろ?

 やっぱり 出かけなくちゃいけないのか

 不幸と幸福は紙一重だな

 あっという間に 心を塗りかえちまう

 せせらぎに身を浸すようなときも あっというまにはじき返される

 戦争にいくみたいだ

 かたっぱしから お願いだ 裁断しないでくれ

 何もできなくなっちまう

 無力だった子供に 逆戻りだ

 なあ スーパーヒーローだって アシストは必要だろ?

 おまえの後ろ姿を見送った後で そっとため息

 考えているさ べつに何もしていないわけじゃない

 忙しすぎるんだ 実は とても

 言い訳に聞こえるかな 仕方がなかった

 だれかが安物の音楽に切りかえるんだろうな クソ!


 おまえのことは信じてる

 けどオレは完璧じゃない 事実を言ってる

 あらぬ妄想に 巻きこむことはしない

 クールだろ?

 演じさせてくれよ 今だけ

 思考があてにならないって? 行動で判別してくれ

 気持ちが安らかになったら きっと内情も追いつく


*戦う人の気持ちです

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