第24話「ダモクレスの剣」

 ~悲劇の元女王、16歳~

 シラクサの王に仕えるダモクレスが、王位の幸福を讃えたところ、王は彼を玉座に座らせた。ダモクレスが頭上を見ると、天井から剣が吊り下げられている。馬の毛によって吊るされた剣は、今にも落下してきそう。

 権力の座の怖さを語る話。

 さて、このダモクレスの剣に直撃されたのは三人の王と王妃達。

 その筆頭は16C半ば、イングランド初の女王となりながらも、9日間しか王座に着けなかったジェーン・グレイ。

 ポール・ドラローシュ<19世紀前半、仏のアカデミーで活躍>が『レディ・ジェーン・グレイの処刑』で人気をはくし、ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵している。


 画面中央には処刑される直前の様子が、演劇の舞台のようにドラマチックに描かれている。

 →16歳のジェーン・グレイが司祭に導かれて、首置き場を目隠しされたまま探ろうとしている。手には真新しい結婚指輪。身の潔白を示すような純白で光沢のある装束を着ている。右隣には「ホーズ」というタイツを履いた死刑執行人が切れ味の怪しそうな斧を準備している。左隣には、侍女たちが女王が今までつけていた衣装や宝石などを手に嘆きの表情。首置台は処刑の衝撃で動かないように鉄の輪で固定され、その周りには血を吸わせるための藁が敷いてある。彼女の身分を考えて、首置き場に腹ばいになるための豪華なクッションが用意されている。


 花の盛りに命を絶たれようとしているこの絵は、20世紀初頭にロンドン留学していた夏目漱石が、短編「倫敦塔ろんどんとう」にて結実させている。


 ~王位を争う犠牲に~

 ジェーン・グレイは、後継ぎ欲しさに生涯六度も離婚と結婚を繰り返し、二人の妻を処刑したので有名なヘンリー8世の、妹の孫で、王位継承権4位だった。唯一の男児はエドワード(6世)。だが生まれつき梅毒だったという説があり長生きしなかった。そのためか生前から継承権争いが絶えず、ジェーン・グレイの後見人がエドワード6世亡きあと、無理に女王にしてしまった。根拠としたのは、ヘンリー8世の最初の妃の娘メアリーと、その妃の侍女に産ませたエリザベスが、父王によって庶子の身に落とされていた時期があったということである。野心家のノーサンバランド公ジョン・ダドリーは自分の四男のギルフォードとジェーン・グレイを結婚させ未来の女王候補の舅となり、エドワード6世が亡くなると同時に、即位宣言をさせた。その時点でメアリーを処刑できていればよくできたほうだったが、彼女は陰謀に気づき、早くも逃亡してしまっていた。



 <反省>

 うまく短くまとめられなかった。

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