☆22時

 そしてそして、家族念願の冷蔵庫をはからずも手に入れたミサ。


 彼女は天にも登る想いで丘を下りていきました。今年のハロウィンは色々なことがありました。たくさんの驚きがありましたし、すこし悲しい想いもしました。


 けれど最後には最高の喜びが待っていました。お母さんやお父さんに、早く冷蔵庫のことを話したくてたまりません。


 るんるん気分で丘を下りていったミサ。すると死神から逃げてからというもの、ずっと街角のベンチで泣いていた友達の一人が、ジャック・オ・ランタンを片手にローブ姿でいるミサを見つけました。


「ミサ!」


「あれ、みんな」


 なぜかウィルの掛けた魔法は解けているのでした。


「どこ行っていたのよ。私たち、すっかり心配したんだから」


「ご、ごめん」


「先に出掛けるなら出掛けるって、そう言ってよ。私たち、あなたが悪い人に捕まっちゃったのかなと思って、警察に連絡するところだったのよ」


 涙ながら訴えてくる友達をまえにして、ミサはすっかり申し訳なくなりました。


「みんな。ほんとうに、ごめん」


「良いのよ。無事ってことが分かったんだから」


 そこで友達の一人が叫びました。


「よし、これでみんな揃ったことだし。これから家を回っていこうよ」


「おお」


 こうしてミサは心優しい友達と再会し、最高の夜へと漕ぎ出そうとしました。けれどそこに骸骨男や猿人、乞食の格好をした男子たちが走ってきました。


「良いところにいやがった。なあ、おまえら、ノアを知らないか」


 それはミサたちのクラスの男子たちでした。おしろいを塗っていることを差し引いても、その顔は血が通っていないほどに真っ白でした。


「ノアですって。だれか見かけた人はいるかしら」


 ミサたち女子たちはたがいに顔を見合わせますが、全員が首を横に振りました。


「見た通りよ。だれも見てないの」


「おれたち、めちゃくちゃノアのことを探しているんだけど、全然見つからねぇんだよ」


「そうなんだ。だけど探しているのはノアでしょう。去年みたいに一人でいたずら回りをしているんじゃないの」


「それはそうだけどよ」


「分かったわよ。もしもノアにあったら、あなたたちのことを伝えとくわ」


「絶対だぞ。裏山の秘密基地で待っているって伝えてくれよ。おい、行くぞおまえら」


 こうしてノアを慕う悪友たちは嵐のように去っていきました。そのあとでミサ以外のみんなは大笑い。


「裏山の秘密基地だって」


「自分たちで場所を言っちゃって。そんなの秘密じゃないじゃん」


「そうよね。男子たちって本当にお馬鹿さん。ねぇ、ミサ」


「う、うん」


 なぜか心に引っかかりを覚えるミサ。そのあと友達とわいわいしながら家々を回りましたが、ノアのことが気になって仕方がありませんでした。


 伝承の存在であるウィルがミサの家にやってきたように、今日のハロウィンという日にはなにが起こってもおかしくありません。ミサはそれを自分の体験から知っていました。そしてミサは決心します。


「ごめん。みんな」


 急に立ち止まったミサに、みんなは驚いて振りかえります。


「どうしたの」


「私、ノアくんを探してみるね」


「どうしたの、ミサ。いきなり」友達はミサを心配します。

「大丈夫だよ。ノアなら」


「ううん。私、なんだかひどい胸騒ぎがして。勝手でごめん」


「ミサ!」


 こうしてミサは友達の静止を振り切り、ノアを探し始めました。ノアに無事でいて欲しい。ミサは心から願っていました。

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