第2話 すれ違いと謎
「あ、また来てるよ、あの子。フロアも違うのに毎度毎度よくやるよね」
「隼と綾乃ちゃん、付き合ってんのかなあ」
「いや、それはないわ」
あたしは、即答する朱里紗を見た。
「なんで分かるの?」
朱里紗はしまったというような顔をしたけど、すぐに曖昧な笑顔を作る。
「
それ以上朱里紗が何かを云うことはなかった。
体育祭や文化祭。クラスの違うあたしたちは自分たちのことで忙しく、さらに顔を合わせる機会は減っていった。そんなある日のこと。
その日は、朱里紗と買い物に行っていて、帰りがいつもより遅かった。
日は短くなっていて、曇りがかった月では灯り代わりになるには不十分だった。
あたしは、家の前に立つシルエットに気づく。
「隼……」
隼はパーカーのポケットに両手をつっこみ、寒そうに背中を丸めていた。隼は、あたしの持つビニール袋の音に顔を上げる。
「菜子」
「まったく、こんなところで何やってんの! 風邪ひいたって知らないよ!」
あたしはポケットの中から、まだ熱をもっているカイロを取り出すと、隼の手に押し付ける。一瞬触れた指先は凍るように冷たく、長い間外にいたことを物語っていた。
「俺さ」
隼は唐突に云う。「明日のクラスマッチ、バスケ出るから」
そんなこと、云われなくても知っている。どこのクラスと当たるかも、選手名簿でチェック済みだ。
「だからなに?」
隼はおかしそうにくくっと笑うと、「いや、それだけ」と云って、自分の家に入ってしまった。
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