晴れの日③

美沙が車を出そうとしていると、篠田か駆け寄ってきて

「美沙さん、ちょっと待ってて!」

そう言って店の中に消えた。何だろう?と子猫を、撫でながら待っていた。子猫はすっかり美沙の手が気に入ったようで、顔を寄せては目を細めている。そう言えばこの子お腹空いてるわよね…。美沙は子猫の口を開けてみた。乳歯は生え揃ってるから、ミルクは卒業してるかしら?そう思案している美沙の手を前足で挟むと子猫はその指先を甘噛みしてきた。

「お腹空いてるよね〜。会社に帰ったら何かあげるからもう少し我慢してね〜」

その意味を理解したのか

「にゃ〜ん」

と美沙を見た。本当に愛想のいい猫ね。と思わず笑みがこぼれたのだった。5分ほどで篠田が戻ってきた。手には大きめのビニール袋。

車の外に出ると

「必要だろうから。この子もお腹空いてるだろうし、とりあえずこれ」

と差し出されたのは、子猫用の缶詰、ミルク、カリカリ、猫砂、猫じゃらしまで。

「え?こんなに??」

と言って美沙は笑ってしまった。なんて気の利く人なんだろう。それともよほど猫が好きなのだろうか。

「ありがとうございます。助かりました」

と言うと

「なにか可笑しいですか?」

と真顔で言うので

「ちょうどお腹空いたよね〜って言ってたところにご飯がたくさん来て、おもちゃまで入ってたから、可笑しくて」

「猫じゃらしはオマケです。じゃ、気をつけて!」

篠田と駐車場で別れてからも、美沙は笑みがこぼれて仕方が無かった。初めて会ったのに妙な親近感を覚えるのは何故だろう。一目惚れで終わるはずが、可愛い子猫のおかげで連絡先まで知ることが出来た。やはり今日はいい日だと思った。

その日は勤務時間が終わるまで事務所の片隅にダンボールを置かせて貰ったのだが、愛想の良い子猫はすっかり人気者で、仕事が終わったパートさん達のアイドルになっていた。家に連れて帰っても、そのアイドルっぷりを発揮し、祖母と父はイチコロ、渋っていた母ですら子猫の為にタオルやら食器やら用意していた。暫くしたら、皆んな情が移って手放せなくなるかもしれない。

美沙はその日のうちに篠田に貰った缶詰を美味しそうに食べる子猫の画像を送った。

***

篠田さんからいただいたご飯美味しいみたいですよ(๑>◡<๑)

***


ありがとう。美沙さんが預かってくれて本当に良かった。

***

深夜に篠田からの返信があった。



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