第31話 加護が生えてた

あのタイミングで同じ名前であんななろうムーブしてたら、相方か? って思っても仕方ないんや……。

でもあんなイケメンちゃうし。

いや、私的には男前! って感じでしたよ?(惚気)


「私はアレか、アズールさんが面倒見てくれるからああいうのはナシなのか……」

「はい、そのかわり何もご存じないようなのでこうして一からレクチャーさせて頂いているわけです」


まー、何も知らんのは確かにそうだけど。

ファンタジーセカイの定番はあらかた知ってるけど、ココに適用していいかは別だしな。

しかし実際、魔獣とか狩った素材を加工してって話、科学的なっていうか材料工学的詳細ってどうなってんのだろう。

向こうのファンタジー物だと魔獣の骨混ぜたら鋼の強度上がったりするのとかあるやん?

スライム粘液の有効活用とかは目からウロコだったけど、そのあたりどうなのかしら。


「魔獣の骨などは、その身に秘めている魔力などで、魔力のない動物のそれと比べて格段の強度がありますから、それを加工によって金属などに添加している、という話ですが……詳しくは錬金術師の方が秘伝とされておりますのでわかりかねます」

「oh……」


謎だった。

まあいいや、そのうち調べよう。

今んトコ錬金術の能力ないからな。

どっかでお勉強させてもらったら生えてくるだろ、多分。私そっち方面のチートっぽいし。

そうなのだ。

さっきステータス見てみたんだが、おかしなのがついてるのに気づいたのだ。


『神白鳥の加護』


……さっきのデカイ白鳥、神の鳥だったの?

ただのデカイ白鳥にしか見えんかったのに?

それに驚いていたんだが、他にも色々生えてた。


『野草採取レベル1』

『スライムを押し拉ぐ者』


……採取が生えてきたんはいいんよ。

実際採取してコツつかめたし。

たかだか数十匹のスライム握りつぶしただけでなんでこんな称号がつくんかと。

他の人らもこんなん付いてんの? と思わずメアリーに聞いたほどだ。

なお返答「……寡聞にして存じません」と言われた私の遣る瀬無さが誰かわかるか?

私ですらわからんわ。

いやまあそれは置いといてだな。

旦那かと思った男性を、ついチラチラと見てしまう。

いや、実際全くの別人だけど、なーんか雰囲気がここの他の人達と違うというか。

もしかしたら、ご同類かもしれない、そう思ったりもした。

何かさりげなーく、それとわかるようなアピールできんもんかしら。

んー、スマホとかとか取り出してチラ見せとかするってのはどうだろう。

他の人は何だかよくわからんものだろうし、反応の違いとかで。

そう思って、ローブの下からカバンを出し、ゴソゴソとしてみた。

ぬるんと出る、ちょいと大きめタブレットみたいなスマホ。

ほれほれ、反応は如何に?



翌朝、飯を食う間もない早朝に出立するために、歩きながらでも食える物を宿に用意して貰った。

もちろん俺じゃなく、鈴木氏の助言である。


『屋台とか、まだ開いてないからね。こういう時は宿にお弁当お願いするもんだよ』

「なるほど、日本の感覚だとコンビニで買えばいいやってのがあるからなぁ。助かる」

『コンビニかぁ、なんか懐かしいや。ドーソン、334、ファミリアマート、ビッグストップ、スクエアK、ANPN、チックンタックン、色々あったなぁ……』

「……もう無いコンビニもあるぞ。あと鈴木氏、地元富山か」

『えっ!?なんでわかんの!?』

「いや、そのもう無いコンビニの一つが富山限定のコンビニだったから? 仕事で結構行ったことあんのよ」

『まじかー……』


そんな事を話しながら、出発の用意を済ませ、宿の出入り口に向かう。

そこには既に先輩方が用意を整え、俺を待っている状態だった。


「おはようございます、あれ? 遅れました?」

「おう、おはよう。いや、日が昇り切る前だ。遅れちゃいないさ」


集合時間は朝、日が昇りきった頃だということだったので、寝ないで済む鈴木氏に、モーニングコールをお願いしたのである。

ただ、目が覚めたら骸骨が目の前にいるのは心臓に悪かった。


『もうすぐ日が昇るよ! 太陽が出たら僕動けなくなっちゃうんだからはよ起きて!』


とか言われて起こされったのだが。すっごい目覚めが悪い。

次からはもうちょっと別の方法を考えよう。

鈴木氏入れたまんまカバン枕元に置いとくとか。


メシを朝と昼の分を受け取って、カバンに詰める。

先輩冒険者たちが羨ましそうに見てくる……。


「あの、弁当入れときましょうか? カバンに」

「いいのか? いやあ悪いなぁ」


すっごい羨ましそうな眼で見られてた件について。

戦ってる最中に血とか付いちゃったりすることもあるんだって。

それはたしかに嫌だな。

まあ研修してる身だし、いい印象もってもらえるならWin-Winだ。

カバンに皆さんの弁当を詰め込んで宿を出る。

すると、先輩冒険者の人が話しかけてきた。

凄いイケメンである。

なんで冒険者とかやってんだこの人。


「そういやミハエル。お前さん冒険者になるって、なんでなんだ? 普通はやらねえぞこんな仕事」

「えーっと……アルムさんでしたっけ。えっとですね、ちょっと人探ししてるんですよ。で、何処かに所属していたほうが融通がきくって話を知人としてたんですよね。冒険者ギルドなら、そのへん最適だって言われて……。そういう、アルムさんはなんで冒険者に?」

「おう、俺は……まあ家族がみんなギルドの関係者でよ。縁故採用ってやつで将来的にゃギルドの運営に携わる事になってんだが、現場で冒険者もやっとかねえと、って言われてな……」


まさかの経営陣側の人だった。

て言うか、家族経営なの? 経営者一族なの?


「経営者じゃあねえよ。しかし、お前何にも知らねえなぁ。うちの国の冒険者ギルドは、国王が個人所有してんだぞ?」

「……は?」


そういやそもそもが国王経営企業だったな。ていうか初代国王、鈴木氏が興したんだからそれを引き継いでるってことか。


『運営とかは丸投げしてたからなぁ……。国王になる前はあっちこっちとの折衝で大変だったけど、王様になってからは楽だったなぁ。相手が便宜はかってくれるんだもん』


はたから解説してくれる鈴木氏、ありがとよ。

まあ権利関係とか無視してるもんな、普通のファンタジー冒険者。

最近はその辺の重箱の隅突っつく系のもあるけど。


「だからよ、国王陛下の直下の組織ってだけで、なんにも知らねえで冒険者になりたがる奴は多いんだよ。普通の奴ぁ後が続かないって話なんだけどな。お前もそのたぐいかと思ってよ」

「ふーむ?」


国王陛下が経営してる冒険者ギルド! 成れたら色々便宜はかってもらえるよ!

ただし、推薦者とか居なかったり、無法者とか質の悪いやつは門前払いだけどな!

って事以外にも何かあったのか。


「こないだみたいに街に魔獣が襲ってきたりしたら、正規採用されてるやつぁ問答無用で街の防衛させられるしな! ちゃんと推薦状とか紹介状持って出稼ぎに来てるやつとかだって、そこそこ戦えなきゃ正規登録させてもらえないんだぜ?」

「そ、そうなんですか」


そいや、認識票タグ貰ったけど、これ正式なのじゃ無い奴は、その出稼ぎ的なお仕事しに来てる人用みたいなもんなのか……。

んなことを話しながら、町の門にたどり着くと無理やり積み上げたようにみえる荷物を積んだ、数台の荷馬車が待ち構えていた。


「昨日より多いですね、馬車」

「俺らがこの町まで特に問題なく来れたからな。大急ぎで出荷の準備したんだろうよ。あっちの街はお得意様だろうからな」


魔獣のせいで、流通が滞っていた、ってわけか。

そりゃまあそうなるな。


「まあ、帰りは楽なもんさ。これだけ大人数だと、魔獣もそうそう襲っちゃこない」

「でしょうね」


あっちだって本能で動く以上、死んだら元も子もない、位は考えるだろ。

多分。

そんな感じで町を出て、街道を逆戻り。

特にこれと言った事もなく、休憩を挟んで一日目の野営地についた。

昨日は野営の最中も襲ってくるようなのはいなかったが、今日はどうだろうか。


「ミハエル、夜の見張り先・中・後のどれがいい?」

「あ、じゃあ真ん中で」

「わかった。さっさと寝とけよ」


適当に飯を食ったら寝る。

荷馬車の主たちは、馬車の下に敷物敷いて寝転がるのが普通のようだ。

俺らはと言うと、焚き火を囲んで寝転がったり二人一組で背中合わせにもたれあって寝たりしている。

見張り役は今回基本4人だ。

4-5-4の変則だが、俺のいる分こうなるのは仕方ないのである。

普通の1パーティー6人組の場合、二人一組で3交代らしいが、今回は2パーティー12人でしかも護衛対象が多いので、こういう組み合わせらしい。

楽といえば楽。

適当に仮眠した後起こされて、見張りした後、また寝た。

特に何もない一日であった。

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