第24話 お試しお試し試験です
「吹き飛びましたね」
「お、おう」
次の日、異世界五日目である。
ゴーレムに持たせた例の魔改造弓であるが、試射を行ったのである。
「まさかの結果でした……」
「普通に打つ分にはうまくいったんだけどねぇ」
ゴーレムが手にしているコイルスプリング弓はその形状をきちんと保持している。
どこが壊れたということもないのだが。
「まさか、数回のポンピングで威力強化したら、矢の方が保たんとはこの私の目を持ってしても見抜けなかった」
「……」
「なにか?」
「いえ、色々と申し上げたいことはございますが、後ほど。こちらに関しては、矢の強化で対処可能でしょうか」
「そだね。ちょっと矢の強度上げてみて再試験だね」
まさかの、発射と同時に矢が砕け散るとは思わなかったぜ。
普通にコッキングして打ち出したのは、弾道も向上していたとのことだし操作も軽くなっていて言うことはなかったらしい。
なお試射担当のゴーレムは、メアリーが作った土人形である。
「便利ですよ? コレ覚えておくと。罠の有りそうなところとか、先行させるだけで被害が抑えられますから」
「おお、罠山盛りダンジョンとかに使えそうな」
「ダンジョンに罠なんてありませんけど」
「マジで?」
「罠があるのは賊の隠れ家やゴブリンの巣、隠者の住処などでしょうか」
「……なるほど」
ゴーレム先行させて罠突破とか、よくあるTRPGの
ゴーレムを先行させる意味がないトコばっかりじゃん。
侵入に気付かれたら負け、みたいな。
まあそっちは毒流し込んだりの方がいいかもだけど。
「で、どうなさいます? 矢の強化を先に?」
「そーね、銃の方やっちゃいましょう。どうせ手直しするならまとめてのが良いし」
「了解しました」
しかし、アズールさん家は広いだけ有って、こういうのを打つ場所も完備されていた。
昔々は有事には、ここで兵を鍛えていたとかいうアレかしらん。
練兵場っての?
まあそれは今は良いとして。
小学校の校庭ほどの広場で、周囲は土を盛られて囲われている。
その土を盛られている所に的を立てて狙っていくスタイルなわけだが。
「今度はもう少し離れておきましょう」
「……せ、せやな」
流石に被害はないとは言え、失敗を仕出かした後だけに、ちょっと怖い。
暴発とかはしないと思うんだけどなぁ、魔道具作ってる時に試行錯誤してたらなんとなく感覚で「こうくっつけるとヤバイ」ってのがわかるし。
だから、大丈夫だとは思うんだけど――。
結論から言おう。
普通に魔法打つのは大丈夫だったが、威力マシマシ版は使用禁止にした。
封印だ。
「まさか、威力拡大版を打つと、ゴーレムが熱でやられるとは思わなかったぜ……」
「これ、自分で試射してたら片腕燃えてますよね?」
「正直すまんかった」
普通に打つ分には普通だった。
だがしかし、威力マシマシで撃ってみたところ。
この銃で魔法を放つと、放たれた魔法が、銃の銃身のちょい先で発動するんだよね。
で、威力増しで打つとどうなるか。
「五倍くらいで止めとかないと、生まれた火球が腕まで届きますね。正直、熱いですどころの騒ぎじゃありません」
「ほんますまんかった。対策講じるので暫しお待ちを」
銃口から後方には対魔法の障壁を張れるようにしてだな……ってもう余裕がない!?
しまったー、自分で隙間を強化で埋めたんだったナンテコッタイ。
「うーむ、しゃーない。こういう時は、こうじゃ」
「……なんですかそれは」
「おぷしょんぱあつー!」
銃に色々とオプション付けるのなんてふつーふつー。
レーザーサイトにストックにと、取り付けパーツの種類はいくつもあるよ!
ということで、銃身の先っちょにマズルブレーキ的な対魔法シールドを指輪改造して取り付けてみたテスト。
「んじゃこれで」
「本当に大丈夫ですか?」
大丈夫だ、問題ない。多分。今度こそ。
再び生み出されたゴーレムに、魔力を充填した銃をもたせて離れる。
威力はさっき言ってた五倍くらいで。
「いきます」
メアリーの合図でゴーレムが引き金を引く。
銃の先っちょに生まれた火球が通常の五倍くらいの体積に膨らみ、狙った方向にすっ飛んでいった。
「あれ?」
「……なんですかアレは」
驚いたのは、私もだけどメアリーもだった。
何に驚いたのかって、魔法の火球がすごい勢いで飛んでいったからだ。
普通はもっと遅い。
だいたい投擲するぐらいの速度だ。
上級者の火球だって、時速百キロ出たら御の字である。
「いまの、すっごい速かったような……マジで速くない?」
「はい、少々驚いております。まさかアノような……」
ざっと、これまでの数倍の速度は出てた。
なんでや、と思ってもう一度、今度はめっちゃしっかりと魔法の構成を見届けるつもりで。
結果。
「これ、モンロー効果っていうのかなぁ……違うっぽいなぁ」
「もん……なんですか?」
要するに、火球を発射する魔法は、火球を生み出す魔法と、火球を操作するための魔法の二つが混ざっているのだと。
で、生まれた魔法を移動させるのに、火球の魔力を消費して前進してるわけだ。
つまり、魔法的には今回取り付けた魔法障壁がクラウチングスタートのスタートブロック的な役目を果たして、しかもその移動速度を増幅させているというのだ。
「……これ、も、封印しとく?」
「い、いえ、コレは大変有用です、が。お方様にご報告をして、今後の取扱いを検討しなければならないかと」
うわーい、新兵器が出来たよ。
弓矢と同じ速度で飛んでいく魔法の火球とか何それ怖い。
勿論、アズール女史には「封印しなくてもいいけれど、これ以上数作らないでね」とお願いされた。
ホンマすんません。
★
「お前さんかい、今時珍しい紹介ナシで登録に来たってのは」
目の前にアマゾネスがいるでござる。
めっちゃ筋骨隆々なおねーさんが、分厚い革のジャケットとスネ丈の革パンツ履いてるとか何この怖い人。
ジャケットの中は薄手のシャツ一枚で、割れた腹筋がくっきり出てる上に、でかいおっぱいがはちきれんばかりである。
正直色んな意味で怖い。
ボクチン襲われたりしないよねと言う意味で。
「えー、ミハエルだっけか。私はここの冒険者たちの元締めの一人、エイミアってモンだ。よろしくな。まずは口頭での質疑応答をこの後行う。それが済んだら裏の練習場で戦闘技術の確認。どちらも合格したなら、2~3日ほどの野外研修だ。わかったな?」
「はい、分かりました。で、質疑応答ってのは?」
「ちょっとマチなって。そっちは後二人ほど来るからよ。お、っときたきた」
「待たせたな、俺はデービッドってもんだ。質疑応答の担当をさせてもらう。そんでこっちが」
「受付でお会いしましたね、ガーベラと申します」
目の前に更に追加されたのは、バーバリアンだった。
なにこれマッチョメン。
もう一人の受付してくれた人だけが心の癒やしだわコレ。
「それじゃ、あちらの部屋で行いますので、おいでください」
ガーベラさんに連れられて、部屋へと入る。
続けて入ってくるアマゾネスとバーバリアンに道を譲りつつ、俺は部屋に並べられた椅子と机を見て、こう思った。
コレ、面接会場じゃん、と。
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