第3部 第8.5話「家造り」

1


あれから2日が経ち、僕はとある問題があることに気付き、パーティーの仲間皆を集めた。

「今日は少しこのパーティーについて、問題を述べようと思います。」

僕は皆の前で言った。

「あのさぁ……」

その場にいる僕以外の全員が、動揺の渦に呑まれ、思わず唾を飲み込む。

そして僕は、また口を開いた。

「パーティーの人数、やっぱ多すぎじゃねえ!?」

……パーティーの人数は総勢十名。

小さな戦闘部隊って感じの規模か。

メイアンの妹達は現在反抗期に入っていて、本来ならば5姉妹一緒に寝る所を、喧嘩がないよう部屋を個別にしなければならない。

……そう。

つまりは、彼女たちが宿泊料金が多くなる原因となるために、このままでは借金をしてしまいかねないのである。

なんせこの世界、部屋を貸し出す料金は安いくせに、それ以外のものはバリバリ高いのだ。

前代の魔王が世界征服を試みていた原因がそれだったとしてもおかしくない。

もやし等の、もとの世界では100円とかそれ以下の値段のものだって、この世界では10000円くらいはする。

どうかしてるぞこの世界。

キャビアなんかがもしこの世界にあったら、どんなお金持ちでも手を出さないのではないだろうか?

「そうね……確かに……多いわね。」

僕の斜め前で佇む希里花さんは、あきれたような顔をしながら、そう静かな声で言った。




2




灰なき広い草原。

そのど真ん中で、両手を広げながら僕は大声で言った。

「……つーことで! 家、作っちまおう!材料集めるのも自分でやればタダで済ませられる!」

というのも、この世界は、先程も話したように借代より、物価の方が極めて高い。

だから、自分たちで木等を切り倒して家を作ったほうが金銭的にちょうど良いと考えたのだ。

もっとも、それができるのは土地代がかからない上、土地の所有権が決められていないこの世界ならではの事なのだが。

「それじゃあ、ます設計図書きましょう!」

そう言った希里花さんは、おもむろに懐から方眼紙っぽいものを取り出した。

あれ、僕希里花さんに話すこと言ってたんだっけ。

てかなんだあの紙。

やけにキラキラキラキラキラってしてんだけど。

「これは魔道具よ。」

「「魔道具!?」」

魔道具、という響きに、僕と結衣奈は目を輝かせながら言った。

この世界にも魔道具(武器以外)の懸念ってあったんだ。


「あれ。加賀谷くんたちには言ってなかったっけ。」

すると、希里花さんはその道具の説明をし始めた。

「これは魔力で書いたり消したり出来る魔道具で……いわゆる、スマホとかパソコンのメモ帳機能みたいなものね。」

『分かりやすい説明、ありがとうございます。

希里花様。』

僕は心の中で呟いた。

そして、それと同時に浮かび上がった疑問を口にする。

「でも、どうやって希里花さんはその魔道具を?」

「それ私も思った」

僕の質問に結衣奈が同意を示す。

「いや……過保護な女神様からのお恵みね。」

希里花さんが言い、そらを仰ぎながら微笑む中、僕たちは首を傾げるのだった。

ともあれ、その後の家造りは順調に進んだ。

そして、夕方頃になって。

……僕たちの家はついに完成を迎えた。

「今日は家完成パーティーだー!」

……


………

……


紅く、絨毯に染み渡る鮮血。

その色は勇一が死んだあの場所にはない、狂気があった。

心臓が転がり、男が闇から顔を見せる。

「おっと、かわいい俺の心臓が汚い床に転がり落ちてしまった。」

……丁重に、扱わなければ。









……だって、






それが、『美少女の心臓コレクター』に託された、たった1つの責務なのだから。

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