第1部 第6話「初回クエストは大騒ぎ・中編」(改稿済)

 1


 なんやかんやで、城に入る。

「うわあ! キレイー!」

 というイリシアの第一声。

 楽しそうな顔でシャンデリアや金箔の壁を見上げながら話すイリシアだが、そんな彼女に対して希里花が返す。

「そうかしら?私はクリスマスのイルミネーションの方が綺麗だと思うけど。」

 だがそんな希里花の言葉に疑問を抱いたのか、イリシアは希里花に聞く。

「え? いるみねーしょんってなに?」

 どうやら、この異世界にはイルミネーションという概念はないらしい。

 希里花はそんなイリシアに、ちゃんと詳しく教えた。

「イルミネーションっていうのはね……」



*******



 そういえば、なぜ城内であるのにも関わらず、この城の地下にはモンスターが湧いているのだろう。

 そう思った勇一は希里花に聞こうとしたが、この世界に来たばかりであることを案じて、イリシアに聞くことにした。

「なあ、イリシア。なんで城なのにモンスターが湧いてるんだ?」

「うーん。詳しいことはよく分かりませんけど、私はあの岩? が原因だと思います。」

 イリシアが指を指した場所……、すなわち窓の外には、透明度が高い、紅色の岩のような物があった。

 少しルビーにも似通っているようには感じたが、明らかに別のものであることは確かだ。

 だが……

「なんであれが原因だと思うんだ?」

 勇一が彼女に対して、疑問を投げかける。

 そんな疑問に対し、イリシアは少し考えるような素振りを見せながら答える。

「私があなたがたと出会う前、モンスターが湧いてる場所をいくつか見付けまして、そこの周辺には大体あれがよくありましたから。」

 なるほど、と腕を組みながら納得する勇一

 だが石があって湧いてるのなら、壊せば湧かないのではないか?

 そう思った勇一は、イリシアにもう一度聞いてみることにした。

「あれって壊すことは出来ないのか?」

「今まで国がレベルMAXの最高職の人を何回も派遣しましたが、全員壊すことが出来なかった、それどころか傷も付かなかったので、予算は尽きかけと、町の貼り付けに書いてありましたけど…」

「……つまり、無敵ってことか。」

「とりあえず、私はレッドダイヤモンドと呼んでいますが……。」

「あの、希里花さん。あれ壊してみませんか?」

 もしかしたら、モンスターが湧いてる原因、本当にあれかもしんねえし。

「え!? ちょ、多分ムリですよ!? 今まで誰も壊した事無いんですから!」

「そうね。一回やってみましょうか。」





*******





「それじゃあいきます。」

 言うと希里花は魔法を唱える。

肉体フィジカル・強化ウレインフォースメント!」

 勇一の腕に、力が漲ってくるのを感じた。

 どんな硬い岩でも、これなら砕けるだろう。

 そう思った勇一は、思い切り剣を振る。



 ――――――――――!

 場の空気に一瞬にして響き渡る鈍い音。

「まじかこれ!全っ然傷もつかねえ!」

 その石は傷どころか、跡も残っていなった。

「だから言ったじゃないですか。ほら、ガルディア討没行きますよ。」


*******


「ここが地下への扉だな。」

 勇一は希里花たちに目線で確認を取ると、その手で扉を開けた。

 現れたのは暗闇の空間へと続く階段だった。

 獣の咆哮のような音がその空間の奥から聞こえるのが分かる。

 これは明らかに、巨獣の発するような声である。

「今唸り声が聞こえましたよね?恐らく、この奥にある空間のどこかにガルディアがいるんだと思います。」

「なるほど……二人とも後ろについて。私にいい案があるの。」

 希里花が言うと、二人はそれぞれ後ろに付いた。

「OK。」

「はい。」

 勇一とイリシアが、それぞれ希里花に返事をしたのを確認すると、彼女は持っていたコインを一枚、空中へと投げた。

「クエスト開始よ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る