第1部 第3話「結成、パーティ!」【改稿済】

「おっ、勇一くん。登録は終わったかね。」


 希里花が勇一に笑いかけながら、アニメや漫画でよく見るような紳士の口調を真似しつつ、そう問い掛ける。


「はい。……ホントすみません! 再会したばかりなのに、こんなにお金を借りてしまって!」


 “想い人にお金を借りた”事への申し訳なさと羞恥心で勇一は顔を赤らめつつ、ついつい頭を深く下げながらそう謝った。


 そんな勇一の姿に希里花は微笑みを浮かべて話しかけた。


「だから、いいんだって。最も、私にもこの世界に転生したばかりの時……、まあ3日前だけど、他の転生者さんに助けてもらったよ。」


 なるほど。


 歴史は繰り返すということだ。


 そういえば、“他の転生者”と聞いたが……もしかしたらうちの学校にも、何人か転生した人はいるのではないだろうか。


 そんな事を考えつき、勇一は希里花に問いかける。


「もしかして他にも誰か、この世界に転生してきてるんですか?」


 そんな彼の疑問が少し引っかかったのか、少しだけ表情を暗くして、彼女は答えた。


「うん。C組の、優人ゆうとくんとか、この前一家で心中した、真黒まぐろくんとか、突然行方不明になったまことくんとかね。」


「意外と居るんだな。。。」


 というかうちの学校自殺者多すぎてどうなん?大丈夫なん?


 勇一の答えを尻目に、彼女は目を背けて、暗い表情で続ける。


「……まあ、一部の人はそのあとモンスターに首チョンパられたけどね……。」


 突然発せられた衝撃の発言に、勇一は驚きの表情を浮かべながら叫んだ。


 ……なるほど。


 それなら落ち込んだ様子であったのにも無理はなさそうだ。


「え!? 希里花さんは大丈夫だったんですか!?」


 勇一の問いかけに、希里花はまた少しだけ表情を暗くし、少し重めに口を開いた。


「ああ……。その人たちより能力値が高かったからね。……特に脚力とか。」


 ……深刻そうな彼女の表情。


 なにがあったのかは知らないが、あまり深く聞かないほうが良さそうだ。


 そして、会話は続く。

 





*******




「ところで、次はどうするの?」


「え?」


 そんなことを突然希里花に聞かれ、勇一は間の抜けたような声を出してしまう。


 そんな勇一の間の抜けた声を聞き、希里花は呆れたように片手で頭を抱え、再び問いかける。


「勇一君、こういうRPGゲームを始めたときに最初にすることといえば?」


「操作チュートリアル?」


 突如問われた質問に、勇一は思わずそう答える。


 そんな勇一の答えに希里花は、「それもそうだけど……」と再び呆れたような態度を見せると、少しだけ顔を顰めて勇一に人差し指を向け、言い放つ。


「初心者用クエスト!」


 聞き馴染みのない単語に勇一は疑問を浮かべる。


 なにせ勇一は転生前、操作チュートリアルで得た武器を盾にレベル20の敵を倒すぐらいには、ゲームがうまかったのだ。


 なので初心者用のLv1~クエスト等はほとんど無縁の存在だった。


「もう!わかるでしょ! クエストやんなきゃ、 経験値とか金貨クロム貰えないよ!?」


「たっ、たしかにそうですね!」


 希里花に放たれた言葉を受けて、勇一は慌てて相槌を打ちながらそんな肯定の言葉を発した。


「でしょ?」


 「流石にゲームのようにレベル20を最初から倒すのは難しいだろうなあ」と、勇一は心の隅で考えていた。


 ……ほんの一瞬だけ沈黙があり、希里花は片手をあげて言った。


「よし、それじゃあクエスト見に行こう!」




***ギルド***




「うーん……。」


 壁が見えないほどに貼り付けられた、膨大な量のクエストのチラシ。


 そんなチラシ達を見て、勇一は険しい表情を浮かべて発した。


「めっちゃ難しそうなクエストばっかりですね。」


「その代わりに賞金は高いけど……」


そんな言葉を発した希里花は、一つのチラシに向け指を指し、勇一に言う。


「これでも一番簡単なクエスト。クリアできる最低なレベルでも、レベル28。」


「……うーん。」


 明らかにレベル1の双剣士がやれるようなクエスト内容ではない。


 そんな考えを浮かべつつも、勇一はまたふと一つ、気になったことを希里花に問いかけた。


「……そういえば、希里花さんのレベルはどのくらいなんですか?」


「えっとね~。どの位だったかな、ちょっと加賀谷くん、肩叩いてみて?」


「い、嫌ですよ? ダメージ与えるのは」


 希里花の衝撃の一言に、焦りながら勇一が答えた。


 そんな勇一の言葉を聞き、希里花は微笑を浮かべて答える。


「そんなに強くじゃなくて、ダメージが与えないくらいに、手のひらでポンって。」


「……分かりました。」


 希里花に言われるまま、勇一がしぶしぶ希里花の肩をポンっと叩くと、何やら数字が出てきた。


「これは……?」


「ステータスだよ。まあ、自分でも出せるんだけどね。」


 そう言って希里花は自分の肩をポンと叩いた。


「じゃあ何で僕に叩かせたんですか!?」


「勇一くん自身で確認してほしいと思ってね。」


「……そんな理由ですか。」


 ……勇一の言葉に頷き、希里花は自身のステータスを見ながら言った。


「ん~。レベルは14だね。」


 推奨レベルはたしか28レベル。


 彼女のレベルは14で、どう考えてもレベルが足りない。


「う~ん。無理っぽいですね。」


 勇一が言うと、希里花は満更でもないような顔を彼に向けて言う。


「いや。そうでもないよ。私、チート持ちだから。」


「希里花さんもですか!?」


 突然の告白に、勇一は再び驚きの声をあげた。


 その返答に対し希里花は驚きの声で聞き返す。


「え、加賀谷くんもなの!?」


「はい。一応最初から双剣士クラス24です。剣はありませんが。あとステータス補正もあるみたいです。」


 勇一の言葉に歓喜の言葉を述べ、希里花は続ける。


「じゃあ多分、剣さえあればOKだよ!剣はある?」


「はい!」


 言いつつ、勇一は腰を探る。


 剣はいつの間にか腰にある、とかそんな展開だと思ったが生憎そうでもないらしい。


 それを確認して勇一は焦りながら言った。


「……と思ったけどなかったんで後で買ってきます!」


 そんな勇一の動作を見て微笑みながら希里花は話す。


「ちなみに私は最初から大魔法使いクラス16。まだクラス24とは程遠いけど。」


「でも多分これ、最強のチート揃いですよ!」


「そうだね!じゃ、パーティ組む?」


「……そうですね!そうしましょう!」


「早速魔王倒しに向かってレッツ&ゴー!」


「ゴー!」



 ――その時彼女は一瞬悲しそうな顔をしたのだが、勇一がそれを見る隙もなく歩み始めたのだった。



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