鐘がなる頃に......
Re:over
第1話
俺たちの住む町にはそりゃあおめでたいお寺がある。
世間では世界一御利益があると言われており、観光客は増える一方だ。しかし、それとは逆に怖い噂もあった。
それは、お寺にいる神様を怒らせた人は冥界へ連れて行かれるという話。もちろん、ほとんどの人は信じている。
俺は神様の存在自体信じたことはない。
不必要なところで恵みを与え、必要な時に限って運は巡って来ない。そんな世を作る最低なやつはいらない。
だから悪ガキの友達を複数人集め、その寺を壊すことにした。
集まった人数は同じ高校の生徒2人。
僕ともう1人は2年で、もう1人は3年の組み合わせだ。全員男子で、いろんな人から避けられるような不良の集いである。
計画実行の当日、寺の前に集合し、バットやマッチなどの確認を終えて寺の中に入った。
緊張感は一切無く、とにかく今までの恨みを晴らしたい一心だ。
木でできた脆そうな門をくぐり、石が敷き詰められた道を堂々と進む。
仏像のある本堂を目の前に一同止まる。
「いくぞ」
先輩の合図で俺はバット、友達はマッチ、先輩は刃物で建物へ攻撃を仕掛けた。
木造の建物は心地よい音と共に崩れ、赤く光る炎に包まれ、刃物で木っ端微塵になっていく。
快感に心を奪われ、罪悪感などとうに忘れていた。
そんな中、先輩がいないことに気がつく。
「あれ、先輩は?」
友達に聞くが、首を横に振るだけで何も答えない。
まぁ、あの先輩は気分屋だから家に帰ったのかと思った。辺りを見渡してみても居ないので、それをほぼ確信する。
「俺らも帰るか」
そう言って友達の方を向くと、そこに友達は居ない。
彼が勝手に1人で帰る人とは思えない。さては、先輩と協力して俺を驚かす作戦でもあるのか? なんて思った。
ゴーン......ゴーン
鐘が鳴った。場所は本堂からで、思わず音の方向を見てしまった。
時間は深夜を少し越した辺りだ。どうして鐘の音が聞こえたのか不思議でならない。
後ろに誰かの気配を感じた。振り返ってみると、さっき壊したはずの門が元どおりになっている。そして、門はしなやかに曲がって歩き出す。
まるで生きているかのような動きに肝を冷やし、パニックになりながら本堂へ走り出した。
本堂も壊す前の形になって待ち構えている。
仕方なく賽銭箱の隣に身を置くが、それも動きだした。手足の生えたそれは俺を捕まえようとしたが、間一髪で避ける。
本堂の裏にある鐘のところまで来ると、雨も降っていないのに濡れた地面と出会う。
それが何なのか匂いでわかった。
薄暗く、赤には見えないそれは地面から鐘の方まで続いており、鐘が視界入った瞬間気がつく。普段は濁った金色をしていた鐘が真っ赤になっていたのだ。
全てを理解し、恐怖で足がすくむ。
後ろから追いかけていた賽銭箱に俺の背中を思い切り押され、鐘の目の前に倒れた。
鐘は自分の中にある空洞を見せつけるようにこちらを向く。
その空洞にはしっかりとした歯と舌が付いていた。
その口は巨大化すると同時に俺に飛びかかって頭からかぶり付かれる。そして、下半身を置いて口の中で痛みを伴う解体作業が始まり、俺の意識は遠い空の彼方へ飛んで行った。
俺の体が完全に消えた後、鐘の鳴る音が町中に響き渡る。
鐘がなる頃に...... Re:over @syunnya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます