ウィヴァーの聴覚説
物
【ウィヴァーの聴覚説】
青が見える。
音が聞こえる。
砕けたしぶきにのって、潮の香りがはなにつく。
海岸には多くのがれきがひしめきあう。
これらはみないつのまにか、大きな波風におし遣られてここへ来たものだ。
いやに照りつける日差しを受け、あゆみを進める僕の目に、からすについばまれる魚の死骸が見えた。
からすは、僕がちかよるそぶりを見せると、どこへなりと散ってしまった。
ただ転がる彼。
鱗がはがれて、身をついばまれている。
目などとうに無くなって……いや、"もしかすると"、この魚は泳いでいたときにはもう目がなかったかもしれない。 もう、身は削れていたかもしれない。
そう、このがれきでさえ……この砕けた彼らでさえ、元はといえばこのようにあったものかもしれない。
いや、これは無為な逃避だ。
ここにいる誰もは、ただ奔流に巻き込まれ、砕かれながら流れ着き、ただこうしてなすすべもなく、僕とともに空を見やっているのだ。
空が青い。 波はやはり浜に押し寄せ、空には腹をすかせた羽が飛ぶ。
果たしてかれらは聞いただろうか。
ここにいる彼らのこえを。
ウィヴァーの聴覚説 物 @Laevel653124710
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます