ウィヴァーの聴覚説

【ウィヴァーの聴覚説】


青が見える。

音が聞こえる。

砕けたしぶきにのって、潮の香りがはなにつく。

海岸には多くのがれきがひしめきあう。

これらはみないつのまにか、大きな波風におし遣られてここへ来たものだ。

いやに照りつける日差しを受け、あゆみを進める僕の目に、からすについばまれる魚の死骸が見えた。

からすは、僕がちかよるそぶりを見せると、どこへなりと散ってしまった。


ただ転がる彼。

鱗がはがれて、身をついばまれている。

目などとうに無くなって……いや、"もしかすると"、この魚は泳いでいたときにはもう目がなかったかもしれない。 もう、身は削れていたかもしれない。

そう、このがれきでさえ……この砕けた彼らでさえ、元はといえばこのようにあったものかもしれない。

いや、これは無為な逃避だ。

ここにいる誰もは、ただ奔流に巻き込まれ、砕かれながら流れ着き、ただこうしてなすすべもなく、僕とともに空を見やっているのだ。


空が青い。 波はやはり浜に押し寄せ、空には腹をすかせた羽が飛ぶ。

果たしてかれらは聞いただろうか。

ここにいる彼らのこえを。

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ウィヴァーの聴覚説 @Laevel653124710

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