優しくしてあげたい〜友弥side〜

 食事を終えて書斎に壮クンを連れて来た。

 俺たちの趣味はある意味マイノリティなので、この書斎に友達が入るのは初めての事。案の定、壮クンは驚いている様子。

 今日はR18のOVAを見るので、念の為ヘッドフォンが必要か確認した。

 実際の所、防音は万全の部屋なので大音量で流したとしても、外に漏れることはないけれど、壮クンがはにかみながらヘッドフォンしたいって言うから今回はヘッドフォン有りで見る事にしょう。

 なんだか、恥じらっているのが可愛くって仕方ない。まぁ、ある意味AV鑑賞するよりもハードルが高いのかも。

 

 そして、本編が始まる。


 ヘッドフォンをして前の画面に集中していると、2人で居るのに孤独を感じてしまう。なーんか、かまって欲しいかも。生憎、俺は発売日には手に入れてすでに鑑賞済みなので、今日はおさらい。感動作を前に余裕がある。

 本当は、鑑賞しながら壮クンと、あーだのこーだのおしゃべりしながら見たかったのに、隣に居る壮クンは画面に釘付け。一寸たりともこちらを気にしていない様子。さみしい〜って余計な事を考えて居るうちに、山場のエロシーンが来た。原作もOVAも見て居るが、これはただのエロなんかじゃない、いやらしさを感じさせない神聖な行為と思えるシーンだ。前回見た時にすごく感動した。

 壮クンどんな顔で見てるのかな〜って面白半分で隣を見た。すると。


 この時、泣き顔に激しく萌えときめき、心の臓を撃ち抜かれ、俺の中の何かが変わるのを感じた。


 泣くのを我慢して、下まぶたにたくさん涙を蓄えていた。きっとまばたきをしたら零れてしまうだろう。溜った涙がゆらゆらと光を蓄えて綺麗だった。

 濡れた瞳がとても綺麗。見てはいけないものを見てしまった様で、ドキドキしてる。胸が締め付けられる感覚が奇妙だ。

 まるで一目惚れをしたような感じがする。え、なんかおかしい。

 それから間も無く画面では、稚拙にまぐわう2人が繋がり最高の山場で壮クンが嗚咽を漏らした。

 ヘッドフォンでは、画面の2人が漏らす『あ、ああっ』と狂おしい喘ぎが聞こえているけれど、それよりも隣の壮クンのヒックヒック言っている嗚咽のほうが気になって仕方がない。

 もう、涙は遠慮なくこぼれ落ちて、壮クンの服を濡らして居る。すかさず箱ティッシュを差し出した。

 何度も涙を拭き、鼻をかむ。そして泣き疲れたのか、少しふらついていた。 

 こんなにも感情豊かな人だったんだ。

 いつも警戒しているし、言葉少なめで、感情の起伏が読みづらい感じの人だけど、心の裡では熱いものと、優しさがあるんだろうな。

 きっと、いつも言いたい事が有るのに遠慮して言えず、ひたすら我慢して辛い思いをして来たんじゃないだろうか。

 奥ゆかしさも度が過ぎればただの自虐だろう。

 25年男として生きて来た矜持はある。性愛の対象はご無沙汰だけど、女性だった。ただの勘違いでありたい所だけど、目の前の男を優しく、守ってあげたいなんて思っている自分がいる。


 そしてまた壮クンの頬に一筋の涙が流れた。

 気だるげな表情にエロさを感じるし、泣いているのが可哀想にも見えるし、なんとも言えない心の昂りをどう発散していいのか判らなくて逡巡してた。

 それからとにかく優しくしたい、宥めたいと言う意識にたどり着き、ふらついている壮クンを抱きとめた。

 壮クンは、俺の行動に驚いて腕の中で体を捩るが、離さない。何度か逃げようとしていたが、ラストシーンに差し掛かると壮クンはもう逃げようとはせず、画面に釘付けになる。壮クンはそれからしばらく号泣した。

 

 ソファーに2人並び、壮くんを腕の中に閉じ込めて泣き止むのをただ静かに待っていた。まるで、昔からここが定位置なんじゃないのかと思う程に抱き心地が良くて、気持ちいい。

 部屋に冷房が効いているから、壮クンがあったかくて丁度よかった。


 それと同時に狂おしいほどの愛おしさを感じた俺は絶望し、一緒に泣きたい気分だった。


 リアルでなんて無い。ただ、OVAの純粋なキャラ達に当てられただけ。

 そう思わないと、ダメなんだ。

 友達だから。

 

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