ターゲット発見 〜友弥side〜
ターゲット発見。本日もセンスの良い服を見に纏い、なんだか体の周りにキラキラが見える様な気がする。
赤い郵便ポストの前に立つ壮クンは、今日も麗しい。きっと俺の家を訪問する為に持参したのだろう随分と大きめなケーキの箱を、両手で持つ仕草が同性のクセにやたらと可愛らしくて、また俺は戸惑う。
ターゲットを確認した俺は愛車を道路脇へ停めて壮クンの元へ急いだ。時計を見れば約束時間よりもまだ10分も早い。5分前には着く様に家を出たのだけど、思ったより早く着いてしまった。
でも、壮クンは俺よりも早く着いて居た。あーあ、一本取られた。
一応デート? ではないけれど、男らしく早く着いて、向こうに『待った?』なんて言わせてやりたかったのに、壮クンは可愛らしい見た目によらず、男気があったんだ。今後、俺も壮クンを見習わなければな。
しかし、今日の壮クンはなんだか随分とぽやーんとしている。どうしたのだろう? なんだかお疲れの様子だ。
聞けば疲れてはいないが、暑いとのこと。常時俯き加減の顔が少し上がると、
頬もやや紅潮して居る。これはいけない、早く涼しい所へ連れて行かなくては。
壮クンの前では俺の残念な『ガツガツ、ガサツ』を出さぬ様に細心の注意を払い、『お紳士』を演じながらエアコンの効いた愛車へ案内した。
「本当に待たせてごめんね。さ、ここからそんなに遠くないからくつろぐ事は出来ないかもしれないけど、外よりは涼しいから乗って」
ナイスエスコートは出来て居るだろうか?
「あ、はい。お邪魔します」
車乗るのにお邪魔しますだって。なんかかわいーっ!
そして壮クンはきちんとシートベルトを締めて、手荷物を後ろのシートに乗せる訳でもなく、大事そうにケーキの箱を膝の上に乗せ両手で支えていた。
「荷物うしろに置いたら? 邪魔じゃない?」
「え、いや、邪魔じゃない。中身偏ったら困るからこのままで大丈夫だから」
「そっか、判ったよ。じゃ出発ね」
なんともまぁ可愛らしい事。俺も知ってる某有名洋菓子店の箱の中身は100%の確率でケーキだろう。その中身を詰めたての状態で持参したい心意気に、
感服する。
偏見かも知れないが、女性にならこんなにも感動は無かったと思う。女子力高いワタクシを見て! な感覚と勘ぐってしまうけれど、男の壮クンは計算では無く素でやってる事間違いない。
なんだか壮クンが女子なら良かったのにな。
過去のトラウマで女性には関わりたく無い。壮クンの事はまだ何も知らないけれど、控えめで慎み深い大和撫子な雰囲気が凄く良い。
嫁にしたい。俺の嫁......すみません、言ってみたかっただけです。
ゆっくりと車を走らせる。運転の最中、何度か壮クンをチラ見して居るが、そんなんじゃ車に酔うよ、と言ってあげたいくらいに随時うつむき加減だ。
どうしてだろう? もしかして、今日の約束が嫌だったのかな。確かに一方的に俺から誘ったのは否めないが、心底嫌なら彼の方から断りを入れる筈。
うーん......。終始不機嫌な表情な彼から心情を察するのは至難の技。この後どうやって接したらいいだろうかな。
俺は一抹の不安を抱えながら車を走らせた。
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