ハイスペック薔薇の館へようこそ

郵便局員、初めての感覚 〜友弥side〜

 前日の天気予報通りに本日は快晴。なんと、今日は俺の家に同志が遊びに来ると言うなんとも素晴らしい日だ。

 昼食も我が家で食べる予定なので、俺は前日の仕事の帰りにスーパーに寄り、普段ではあまり買わない大きな塊の牛肉を買い、夜な夜なビーフカレーを仕込んだ。

 出来栄えは最高だ。きっと、壮クンも喜んでくれる筈だ。

 あ、その『壮クン』って言うのは俺の心の中でこっそりと呼んでいる呼び名なので、みんなにはまだ秘密だ。

 彼との出会いは俺の勤務先の郵便局で、俺の取り巻く環境のおかげで彼の持参した振込先がどう言う関係のところなのか判っていた。

 ああ、話してみたいな、友達になりたいな、なんてこっそり思っていた時、受領書を受け取らずに帰ってしまうアクシデントが起こり、その時にきっと今しか無いと思った俺は追いかけ、その勢いで友達になって欲しいと言ったんだ。

 そうしたら初めは警戒されてしまったけど、好きなカップリングの話に花が咲くと凝り固まった表情が次第にほぐれ、彼の持つ可愛らしさに拍車が掛かった。

 

 そう、彼は可愛らしいのです。


 愛読するBLの所為でゲイかと思われるかも知れないが、俺は歴としたノンケです。経験値は25歳と言う年齢に相応しい程度にはある。

 でも、過去に起きた事件の所為で女性不信に陥り、しばらく恋愛事からは遠ざかってた。もう何年も前の事だけど、どうしても臆病になってしまい、有り難く女性から言い寄ってもらっても、その気になれずにいた。

 人を好きになり、可愛がり、自分を磨く努力をする事は嫌いじゃないし、むしろ生活にハリが出て毎日が楽しく過ごせるから恋愛する事は嫌いじゃないけれど。

まあ、今はBLで癒されてるから虚しくも無い。

 でも、困った事にノンケと自覚はあるけれど、男の人に対して可愛いと思う感情を今迄持った事なんて無かったのに、壮クンに限っては可愛いと思ったのが第一印象だった。

 外見はもちろん仕草や態度が警戒している小動物の様で可愛くて......これはBLの読み過ぎなんだろうか? この感情に名前の付けようも無いが、ある意味マイノリティな腐男子同志の友好をこの機会に是非、深めたい。

 あともう少しで家を出る時間だ。彼との待ち合わせは俺の勤務先の郵便局。5分前には到着しなくては。 

 ああ、楽しみだな。きっと、俺の家に来たら驚くだろうな。

 なんせ、家には......きっと有意義な時間を過ごせる筈だ。

 彼の驚く顔が見てみたい。喜ばせたい。

 そう思いを馳せながら、俺は現地に愛車で向かった。

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