なんだかくすぐったい
今日は金曜。日勤を終えて帰宅後、入浴、夕食を済ませて晩酌をしながら有意義な読書タイムを楽しんでいた。
今日のコミックスは優しいふんわりとした絵柄の先生で、その絵柄と切ない内容が僕の胸を締め付けていた。
酔うと泣き上戸の僕は、その切ないストーリーで涙腺崩壊し、盛大に鼻水をすすっていた。そしていよいよラストに向けてのエッチシーンに差し掛かろうとして居た時、僕の心の盛り上がりを無視するかの様に、スマートフォンのメール着信音がけたたましく鳴り響いた。
はぁ......眉間にシワが自然と寄ってしまう。
たかがメール着信音と言えども、この気持ちの盛り上がりに水を差されて、短気かもしれないが苛立たずには居られない。
最大の見せ場を中断して律儀にメールを確認する。
送り主は例の郵便局員。
『いよいよ明日ですね。昼ごはんはこちらで用意するので、おなか空かせて来て下さいね!』
簡単な文面と待ち合わせの詳細の連絡だった。
『良い天気になるといいですね。では明日に』
至極簡単な社交辞令の様な文面を送った。そしてその瞬間に大きく後悔した。
「うわぁぁぁっ」
思わず叫んだ。なんのひねりの無い返事しか出来ない自分に呆れる。
先日から数回メールが来ている。そのたびに自分の語彙力の無さに呆れ、途方に暮れて居た。
これまでメールのやり取りなんて家族くらいで、みちるとのメールは絵文字の羅列も容易いのに、同性の友達......ともだち......とも、なんだか口に出すと照れ臭いな。その、友達と呼ぶ様な人が居なかったから、なんて送れば良いのか判らないんだ。
まだ、彼の事は信用している訳では無いけれど、初めて出来た友達にどう接して良いのか判らない。でもなんか嬉しい感じもする。
心がくすぐったい。これもマイノリティな境遇の吊り橋効果だからなんだろうか。
考え始めたらきりが無いからやめよう。
そして僕は考えるのをやめて途中だったエッチシーンを読み始めた。
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