なんでバレた!
なんともクッソ眩しい野郎だ。
僕はまた先日に来た郵便局へ、全サの振込の為に訪れていた。
本日も残念な事に窓口にはあのきらびやかな男と、中年のおっさんが居る。
局員の中で、色白でそばかすの目立つ眼鏡っ娘のお嬢さんは、窓口の奥で何やら事務処理をして居る。
あんな風貌の女性なら、僕も嫌悪を抱かずに接する事が出来るのに。どうしてあの素敵な女性が窓口の花となって居ないのが不思議でたまらない。ここの局長の頭はきっとおかしいのだろう。
綺麗ばかりでは、取っ付きにくい事を知らないんだな。なんて残念な局だと心の中で嘲ていると、先日と同じ様に僕の手の中にある番号札は、少し日焼けして綺麗な白い歯をきらめかせたイヤミな局員の窓口へお呼びが掛かる。
「いらっしゃいませ」
彼は一度顔を会わせた事があるからか、まるでちょっとした知り合いにでも会った様に『あっ』みたいな顔をしてやがる。僕はお前なんて一局員としか見ていないんだぞ。
そして目の前のカルトンに先日と同じ様に、振込用紙と料金を乗せた。
「お預かり致します。......んっ!」
渡した用紙の宛先を見て瞠目された。
宛先には、出版社のR社の名と、K先生の作品名と小冊子係とくらいしか書いて居ない。なのに目の前の彼はカルトンに乗った用紙と僕を交互に見てニコリと微笑んだ。
えっ......もしかしてこの男、まさか判ってんのか? でも、こんな出版社やK先生の名前でジャンルが判るはずが......でも、他の女性客が同じ様な振込をこの窓口でしていたのなら......回数を重ねて何かの拍子でジャンルを知ってしまったとか......。
僕の気のせいかも知れないけれど、彼が僕の事を生温かい目で見て居る様な気がしてならん。
軽快な手つきで事務処理をこなし、何か言いたそうな目つきを向けられた時、僕はその場を逃げ出した。
野生の勘。ヤツは僕の愛読書がボーイズラブだと判っている!
「あっ、お客様っ」
また前の様に男のクセにと思われるのと、直接揶揄されて精神的苦痛を受けるのが怖くて僕は、明細書を受け取らずに腐ったプライドを総動員させて何知らぬ顔を作り、その場から逃げ出したのだ。
ただひたすら怖い。ソレしか無い。
全力疾走すれば、他の人達に何か悪さをしたのではと大袈裟に捉えられるのも嫌だったので、僕は競歩の如く走る一歩手前の速度で歩き背後から聞こえる僕を呼ぶ声を無視した。
建物の外に無事に出た僕は、ちらりと後ろを振り返った。すると、ガラスの自動ドアの向こうからあの局員が追いかけて来るのを見た僕は、一目散にその場から早歩きで逃げた。
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