束の間の癒し
「壮ちゃん元気だった?」
「うん、みちるは変わりないかい?」
「......ん。特に変わりは無いかな?」
少々様子が気になる。
「えーっ、なんかみちる隠していないか」
「ううん、なんもないよー。それよりもこの前の全サの応募は終わった?」
「ああ終わったよ。みちるが居ないから面倒臭いよ」
今日は久しぶりにみちると電話で近況報告をしていた。メールでのやり取りはしていたが、僕の夜勤やみちるのバイトや学校のタイミングもありなかなか会話出来ずにいた。
久しぶりに聞くみちるの声に僕は癒されて居た。兄の僕が言うのも難だが、みちるは器量も良く、気立ても良い。おまけに声まで可愛いときた。
離れてしまってから自分でも自覚しているほどのシスコンぶりに拍車が掛かっている。
「あ、そういえばK先生のプレミアム小冊子の応募は終わったの? 確かもうすぐ〆切の筈だけど」
K先生とは、僕らが愛して止まない作家様で、長期に渡り連載されていた作品の完結記念の小冊子の事だ。
「みちるはもう応募したの?」
「もちろんだよ。あーゆうのは読後にテンション上がっている時にサクっと済ませるのが私の流儀だからね」
「まぁ、時間の都合が付くならそれでもいいけどな。しかしおんなじ物を2人共応募しているなんて勿体無いというか......でも、一冊分は先生の売り上げに貢献出来ているって事か」
みちると同居の時は、月刊誌、小説、コミックスを2人で買い読み合って居た。僕は社会人なのでみちるよりも多く購入していたけど。
「忘れないうちに行って来たら? まだ郵便局やっている時間だしさ」
「ああ、面倒だけど行って来る。だって読みたいもんな」
「じゃあ来月あたりに壮ちゃんの家に遊びに行くね。その時友達も連れて行ってもイイ?」
「もちろんだとも。首を長くして待っているから」
みちると会話を終えた僕は、夜勤明けで乱れている身なりを軽く整えて家を出た。
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