再亡命。
逃げだした果てにひと回りして戻って
結局はなにも変われなかった僕自身が
またどんどんと冷えてゆくのを感じては
もういちど暖めてもらいたくなっていた
本当のこころはもう自分でもわからない
痩せこけた夢の欠片が刺さっているだけだ
剥きだしになってしまった思いのたけを
誰かのもとへと届けることができたならば
僕はもういちど逃げることができるのか
それすらわからないその日暮らしの中
小さな鞄だけを片手にぶら下げたままで
わずかな糧を求めて配給の列へと並ぶのだ
未来とか夢とか信じていない僕には
愛とか希望とかも特に意味を成しはしない
胸の穴は以前よりも黒々と闇を湛えては
置いてけぼりにされた死体が転がっている
冷たいのも無理はない話なのだろうなと
変な所で納得してしまった僕がいるだけだ
配給ではいつものように米が配られたが
その一方でひとりの大人から飴をもらった
水飴を固めただけの簡素な飴だったけれど
久々に食べることのできた甘いものの味は
こころの中にわずかなヒカリを灯しては
なんとか凍えゆく思いを繋ぎとめてくれた
今度こそ本当に逃げられるかは知らないが
頬を伝っていった涙が指し示した方へ
変わることのできない弱さを湛えた僕は
もういちど逃げるために切符を手にして
全力でひとの波をかき分けて走り抜けては
最終の列車に僅差で滑り込んで息をつく
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