サフルール・パステル。

ベニバナから搾り取った紅色を散りばめて

終わらない原色の世界を作り上げてみたら

ヒカリが乱反射するごとにきらめいて

嘘のようで嘘ではない輝きがそこにあった

この世界に埋没できたら楽になるのかと

そんなことを思いながらまどろんでいた


圧縮した紅色の織り成す風景画の世界は

鮮明なパステルカラーと映えて交錯し

静かにこころを彩る絵の具となった

優しい気持ちが溢れる一方で止まずに

嘘も偽りもない紅色の景色の断章の中で

眠っていられたならどんなによかったのか


サフルールという耳慣れない言葉を聞いた

それはオランダ語でベニバナのことらしい

どうやら大昔からこの紅色に魅せられて

ひとびとはこの花を育ててきたのだそうだ

いまでも変わらないその流れを汲む色は

まったく衰えずにひとのこころを魅了する


染料へとちょっとの黄色を混ぜ込んだり

微かに蒼を溶かし込んだりしてできた色は

世界を描く時に貴重すぎる華やかさを持つ

絵筆に乗せてその色を散らす時には

瞬いたこころの音とともに彩りを添えて

非常な粉末のように可憐に塗り変える


サフルールという響きが妙に気に入って

その言葉をこころのうちにしまい込んだ

いつか時がきたらこの名前を思いだそう

鮮やかな色彩の世界とともにあった

幼少期の美しくて儚い記憶の数々たちを

反芻して本当の幸いへと変えてゆく刹那に

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