第3話
「美里ご飯取りに行こ」
「そうだね」
私と涼子にとっては、ご飯の時間だが。
明先輩は、目をギラつかせながら乾杯を口実に早速他部署の男性の元へと向かっていた。
…肉食獣コワイ
それよりも料理だ。私と涼子はまず、ソースが光り輝いているローストビーフを口に入れた。
「なにこれ、美味しい」
「お肉柔らかい!!なにこれ」
「柔らかいのに、お肉の味がしっかりしてる…」
口々に感想を言い合い、料理に舌鼓を打つ。
こんな料理なんてめったに食べれない機会なのだ。十分に楽しませてもらう。
「美味しいねー」
「これ食べれただけで満足だよ」
「私、これおかわりしてくる」
そう、言って涼子は料理の元へと去って行くと
「河中美里さんだよね?事務の」
「はい?」
知らない男性から話しかけられた。
「お食事中にごめんね、いつも事務の人にはお世話になってるから、この機会に御礼を。と思ってね」
振り返ると、ダークグレーの生地にラインの入ったスーツを着こなした黒髪で少し猫目の男性が立っていた。
「は、はぁ」
体がこわばる。脳内に昔の出来事がフラッシュバックされる。
男性は、私が固まったのを見てなのか、人の良さそうな笑顔を浮かべた。
「あ、ごめんね急にボクはマーケティング部の守谷肇です。いつもありがとう」
「守谷さん」
「はい、守谷です」
ニコリと笑って顔を傾ける。
マーケティング部の守谷さん。頭のなかでもう一度復唱する。
目の前の男性…守谷さんはいわゆるイケメンの部類に入ると思う。笑って顔を傾けるその姿は、どことなく色気が漂っており、マーケティング部よりも営業の方が向いてそうな感じだ。
「あ、あの事務の河中美里です」
「うん。知ってる」
人が勇気を出して発した言葉に何だコイツ。と思いつつも、そう言えば確かに最初名前をフルネームで呼ばれたのを思い出す。
と言うかなんで知ってるんだろうか。
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